#2 半魔族化ァ!?
「……だあああ…………つかれた……」
西洋の屋敷、その一室のような部屋に案内された俺は……何故か天菜と同じ部屋に配置されていた。
豪華な椅子に座り込む。
他も二人づつで分けられていたのだが……まあ見ていた感じここに来てから1番多く話した人とだろう。
「風結、これからどうなるんだろうね」
不安そうな顔をしながら外を見ていた天菜が口にする。
外の景色は創作物で見たファンタジー世界にそっくりで、様々な色が混ざりあったカラフルで、それでいてまとまりがついている平原と森……その奥には大きな山が見えた。
「……そーだな。兎にも角にも……魔法だろ!覚えるべきは!!!」
呆れた顔でこちらを見ていた天菜が居た。
が、そんなことは関係ない。俺……いや、全男子が虜になるであろう魔法がある世界だぞ!?
魔法を使わなくてどうするってんだ!!
「本当は全く変わってないんだよね、ふふ」
笑顔で、それでいて静かに笑う天菜の姿が目に焼き付いた。
何笑ってんだコイツ……失礼なやつだな。
「ま、風結がいるなら私も何とかなるか。他のみんなもいるしね」
「……まーな」
なんて会話をしていると部屋の扉からノックの音が聞こえる。
はーい、と言った天菜が扉を開け――――――!?
「だっ、だれ…………!?」
「天菜っっ!!」
駆けつけた俺が見た、それを前にした途端、声が出なくなった。
いや、声が出せない……と言うよりは、息が吸えない。
手足の震えが止まらない。冷や汗が流れる。
警告している。身体が。
「んんー?そうだねぇ、そうだそうだ。君らがアイツが呼んだ勇者とやらかぁ。……あはっ!おもしろいこと考えた!」
そう言った目の前の……角の生えた人型の化け物が天菜に手を伸ばす。
……させるか。
「っ……よ……まてよ……!!」
「お、動けんの?いいねいいね!じゃあ君にしよう!」
手が、こちら側に向く。
そして真っ直ぐと伸ばされると、俺の胸辺りにめり込む。
「がっ……!?あ……?」
変な……感覚だった。
痛みはない。妙な不快感だった。
「そうだねー、じゃあコレ、あげるよ」
は?何……?
「...おー!いいねいいね。
じゃ、また会うと思うからそれまで何とか生き延びてね、その身体で」
そう言うと地面に吸い込まれるようにして、目の前の人物が消える。
それと同時に震えも汗も止まり、声も出るようになっていた。
「っはあ……はあ……天菜、大丈夫か!?」
「う、うん……それより風結……その身体…」
「へ……?あ?」
部屋に備えていた全身鏡を見る。
そこに映っていたのは、バツ印のついた天使の輪、白くなった頭髪、手首からぶら下がっているちぎれた手錠……まるで化け物が映っていた。
「……俺…………人間じゃないのかな……?」
そう言った俺と天菜の耳に声が聞こえる。
『緊急収集、緊急収集。魔族の侵入を確認、魔法による一斉転移を開始するためその場から動かないでください。』
部屋に置いていた水晶から声がする。
先程の……メイドの声だろう。
え?いや名前忘れたとかじゃないですよ……??
なんて茶番をしていると足元が光り、目が眩む。
次に目を開けた時には既に城の中庭のような……レンガでできた広場にいた。
これも魔法だろうか?
「え、お前らも!?」
秋斗が言う。
お前ら、クラスの人に。そして俺も、お前らに当てはまっていた。
「秋斗もか!?なんだよこの姿!」
「なんか変な格好したやつに体ン中手入れられて……」
「私も!なんかツノ生えてた!」
各々が言う。
まるで怪物のように姿が変わったクラスメイトが。
「クラスの……半分くらいが風結みたいに姿が変わってる……?」
「みたいだな……。ま、俺の見た目が一番カッコイイか」
「……そこ?……しかもそんな優劣ないでしょ」
周りを見わたすとクラスの半分、恐らく部屋分けの時の二人のうちどちらかが変異しているのだろう。
獣耳が生えているもの、尾鰭のようなものが生えているもの……簡単に言うと人間ではなくなっていた。
「落ち着いてください、こちらから説明させていただきます!」
「……ミシェルさん?」
「はい。その現象は
「半魔族化ァ!?」
「害はないです。身体能力の向上、魔力量の上昇など、恩恵は様々。しかしながら見た目が魔族に酷似する、と言う難点がございます」
「それは何か拙かったり?」
「見た目はほとんど魔族ですので……それくらいです」
ミシェルが皆に言う。
半魔族化……こんな異常事態であるにもかかわらず何故か落ち着いていた。俺だけじゃない。半魔族化したクラスメイトが。
「非常事態ですのでそれぞれの2人組に王宮の
そう言うと、この広場に連れてこられた時と同じ、光り輝く地面とともに景色が変わる。
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