神々、飽き飽き。
花月 零
第1話
豪華絢爛、酒池肉林。そんな言葉が似合うくらいに宴会会場は最高に盛り上がっていた。それは、私も同じようにグラスを傾けてワインをゆっくりと流し込んだ。
神無月も半ば、神たちが集まる所謂懇親会のようなものが催されこうして各々楽しんでいた。もっぱら、酒のつまみは現世の人間たちのことだが。
「おや、貴方も呼ばれていたのですか。」
「珍しくね。私も呼ばれるとは思っていなかったよ。」
「貴方は人前に出ることは滅多にないですからね」
「仕方がないだろう?人間の願いを聴き入れてやるほど暇じゃないんだ。」
そう、ここに集まる神は大抵、人間の願いを聞いたり気まぐれに叶えてやったりすることが大半だ。
だからこそ、人間を嫌っているわけではないが願いを叶えてやるつもりもない私が呼ばれるのは稀有なこと。
頬杖とため息をついて、次は清酒でも煽ろうかとその場から立ったとき、少し興味を唆られる話が耳に入ってきた。
「それにしても最近の人間は神を都合良く扱い過ぎている!」
「そうねぇ、彼女や彼氏が出来ますようにって願って、失敗したら厳しい言葉をぶつけてくるもの。」
「学生からの祈りも多いな。ヤマが当たってほしいだの、教師から当てられたくないだの。」
「あと、自分の不運を儂らのせいにするのも辞めてほしいのう。」
人間たちに対する愚痴。普段はそんなつまらなさそうな話には食いつかないのだが、今日は酒が入っているからか妙に唆られてしまった。
目的通りに清酒を持って人間の愚痴を話している神たちに混ぜて貰うことにした。
「おぉ、お主も呼ばれておったか。」
「珍しく、ですよ。それにしても随分も鬱憤が溜まっているようですね。」
「そうなの。私達はあまり現世の人間さんに干渉しちゃいけないのに。」
「それを分かっとらん奴らが多すぎる!腸が煮えくり返りそうになる!」
「キミは人間嫌いだったと記憶しているが、人間の話に食いついて来るとは意外だな。」
「人の不幸は蜜の味って言うだろう?私にとっては極上の酒のつまみさ。」
そうして何時間も話し込んで、皆が眠りについた。
さて、君たちは一体どうだい?
神がそんなこと言うはずがないと思った?
それとも、自分を重ねて図星を突かれた?
私にとってそれはどうでもいい。
ただ、これだけは覚えておくことだ。君たちの安易な願いや祈りは誰かが必ず聞いている。
勿論、他人の不幸を願う声も。
日々の生活で安易に神に願わないことだ。
もう、君たちの薄っぺらい願いには飽き飽きしているからね。
願うなら、もっと壮大な未来のことを願うことをお勧めしよう。
この言葉が『誰か』に届いていることを神ながら願うとするよ。
神々、飽き飽き。 花月 零 @Rei_Kaduki
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