雄姿の偉丈夫
黄色い大波が四つに割れた。
あっという間に、四方の
それに
「どんどん丸太をぶち当てろ!」
東門に寄せた
東門の指揮を任されていたのは、
ドオオオン――。
「ま、まずい! あの大男が出てきた」
許褚の雄姿を認めた黄巾の賊徒は、波が返すように丸太もそっちのけで四散した。
「お、おい! お前ら逃げるんじゃねえ!」
算を乱して逃げ惑う兵が退くと、黄邵の眼前に三百を率いる豪傑、許褚の姿が見えた。
「俺が仕留めてやらあ!」
黄邵は馬腹を蹴った。頭上で槍を旋回させると、一直線に許褚を目指した。
迫る一騎に気づいた許褚は、その騎馬に向かって走った。馳せ違う
許褚は
「丸太を持った兵を狙え! 墻壁に登ろうとしている奴もだ!」
北門の門楼で、
「盾兵は丸太の突撃隊をしっかり守って。弓兵は城壁にいる奴をよく狙って」
柔らかな笑みを浮かべている。北門に攻撃を仕掛ける
北門は、一進一退の攻防が続くやに見えた。
すると――。
轟音と共に開いたのは北門近くの護城墻、その門扉だった。
その音にはっとしたのは、許定だった。
黄巾の荒波に勇猛果敢と身を躍らせたのは、許褚だった。北門の守備を担当している若人三百ほどを引き連れている。
「勝手なことを――」
許定は苦々しい表情を浮かべると、弾かれたように門楼の
許褚の勇躍に恐れを成した黄巾の賊徒は、
「さては、
笑みを浮かべた龔都は、佩剣を引き抜くと馬腹を蹴った。
龔都の接近に気づいた許褚は、待ち構えるように槍を引っ
許褚と馳せ違う
「がっ――⁉」
暴風が龔都を襲った。許褚は、宙を舞う虫でも払い除けるが如く軽々と槍を振った。
その柄が当たった龔都の
「……こ、これは、
ふらふらと身を起こした龔都に微笑が浮いた刹那だった。頭上で何かが光ったようだった。龔都は、
ガギイイン――。
降ってきたのは剣の一閃だった。その重さに耐えきれず、龔都は地に片膝を突いた。
その豪快な一振りを龔都に浴びせたのは、
「とっとと帰れ。
許定だった。二百ほどの
「よし! 戻れ、褚! みんなも
龔都には興味を失ったように、許定が若人たちを
「困ったな……あれもなかなかの
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