本当のお宝
広大な原野に不釣り合いなほどの巨大な建築物を捉えた。
「ほう。ありゃあ、
「塢……?」
馬を駈けさせながら
「ああ。農民どもが築いた防衛に特化した
この地方に
「龔都、
「了解」
風を受ける劉辟の顔は、不気味な笑みを湛えていた。
北東と南東の
東の
「一万は下らぬのう。門という門に一斉攻撃を仕掛けるに足る数じゃ。許淵、四門の守備を指揮する者は定めておるか?」
北東の
「ああ。四門死守の合図は、全角楼の鐘が同時に鳴ったときだ。指揮者の指示で各門を防衛することになっている。だがそのときは、
弓矢を手にした
「それで良い。奴らは関城の脅威を知っておる。関城に人が入れば、厄介な関城を先に
「この
許淵に不敵な笑みが浮かぶと、すぐさま塢内に四門死守の指示が飛んだ。
寄せる黄巾賊は、ほとんどが歩兵だった。斥候と将のような者だけが騎乗している。
放った斥候からの報告を聞いた劉辟は、
「東西南北、好きな門を選べ。各々三千を率いて選んだ門を攻めろ」
次第に近づく塢を睥睨した劉辟が言うと、何儀と黄邵は互いに顔を見合わせた。
「この前の借りがある。当然、俺は東だ」
黄邵が鼻息を荒くすると、
「黄邵が東ってんなら、俺は西にするか」
「龔都は北と南のどちらがいい?」
劉辟は後方を一瞥して質すと、龔都が微笑を浮かべて応じた。
「僕は北にします」
「俺は南だな。最初に門を破った奴に取り分を多くしてやる」
何儀と黄邵は目の色を変えると馬に
「中身なんかくれてやる。あれこそがお宝なんじゃねえか。あの塢が手に入りゃあ、
劉辟は、駈け去る同胞の背に冷めた視線を走らせながら独語した。
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