御免の余生
「また攻めてくるであろう……」
眉を
許淵の屋敷に主だった父老たちが集っている。
四方の城門はまだ閉ざしている。
沈黙を破ったのは張平だった。
「次は、どれほどの軍勢で寄せるかわからぬ。戦が長引けば
「春になったばかりだ。備蓄していた糧食も心許ない。狩猟に出られないとなると、十日持つかどうかだろう。それでも冬小麦が豊作だったのは不幸中の幸いだ」
張平に続けて、対面に座った薛宇が神妙な面持ちとなった。
すると、集った父老たちが思いの
「大軍勢で押し寄せられれば、十日耐えられるかどうかもわからぬのう」
「怪我人も多く出た。降参も視野に入れるべきではないか? 命までは取られまい」
「降参となれば無血開城が理想じゃ。四方の門を開け放てば、降参の意となろう」
「……うるせえ」
「黄巾の残党なんざ、野盗の群れだ! 降参なんかして、女子供が無事な訳ねえ! 黄巾を追い返すために必死に戦った若え奴らにも顔向けできねえ!」
許淵は、大きく息を吸い込むと、腕組みして胸を張った。
「また、同じことを繰り返すのか? 荒らされ、略奪され、壊され、暴威に抗うことなく黙って見てろってか⁉ みんなで必死こいて築いた塢だろうが! 俺は、ひとりでもこの塢を守ってやらあ!」
許淵は、塢と命運を共にする覚悟を決めている。太々しい笑みを浮かべていた。
それを
「許淵の言うとおりだ。降参はない。降参するくらいなら、戦って死んだ方がましだ」
「ああ。降参するために築いた塢ではないからな。暴威に
「
それだけ言うと、元緒は
「……どうやら、
父老のひとりが呟いた。
「そうじゃな。塢の平和を自ら捨て去るところじゃった」
別の老父が目を細めた。
「さて、急いで矢を
許淵は、弾かれたように立つと
「よし! 何があってもこの塢を、この
「応‼」
そういうことになった。
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