第37話 図書館から
日曜日 朝早くから図書館への準備をする
本条からは『図書館は9時からだけどオープン前は結構人が多いから開いてから1時間くらいしてから行こう』って提案があった そんくらいのが朝ゆっくりできるしわたし的にもOKだった
口うるさいカノンはわたしより朝早くから出かけてていなかった 服装チェックしてほしかったのに…
こないだの一件以来 少し心配してたけど今はケロッと元気になったカノンを見て正直ホッとした
恋愛にまつわる悩みなんてわたしには荷が重かった カノンも花凜ちゃんも相手見て言ってほしいよ
なんて考えてる間に時間は無情にも過ぎてた
「やっば! もうこんな時間!?」
図書館まではバスで行く
バスの発車時刻も事前にきっちりチェックしてたにもかかわらず慌てる自分が情けない
女の子は朝時間かかるから なんて言ってられないくらい早起きしたハズなのにな
「いってきまーす!」
そう言ってわたしは家を飛びだした
「お昼はよろしくねー」
ってママの声が聞こえてた
なんかお弁当でも買えばいっかって思ってた
家からバス停までも少し距離がある
歩くよりも走りたかったわたしは走った!
まぁ走ることに関しては【
風を切る感覚が気持ちよかった
頬で受ける風が冷たく感じた
ー 季節進んでるんだ ー なんて思った
図書館につくとそこにはもう本条がいた
まぁバスの到着時間もあるし こればかりは仕方ないって思う
「おはよ」
せめて本条より先に挨拶をする
「おはよ」
声でわたしの存在に気づいたようだった
「とりあえず入ろうぜ」
そう言ってわたしに背を向けて図書館の入り口へ向かう本条 それについてくわたし
何度も来たことある図書館だったけど いつも一人だった記憶 そういえば花凜ちゃんと一度来たことあったっけ? それとも違った感覚を妙に意識してしまう自分がいた
きっと本条を見たからだ こないだのこと思い出して勝手に意識してる
「とりあえず場所探そうぜ お勧めの本も持ってきてることだしな」
本条のお勧めの本も気になるし とにかく座れる場所探さなきゃだ キョロキョロしていると席を立って帰ろうとしてる人がいた
「お、あそこなんかいいんじゃね」
今空いた場所に本条が荷物を置く
柱の陰に机とイスが二つ 向かい合わせって訳じゃないけど仕方ない
「気になる本あるから探してくる 後で交代するから神楽はちょっと待ってて あと、待ってる間におもしろそうなら読んでみて」
そう言って本条は机の上に自分が持ってきた本を置くと立ち並ぶたくさんの本の棚に吸い込まれていった
わたしは本条が置いていった本を手にとった
【車輪の下】
どこかで聞いたか見たタイトルだけど思い出せなかった
パラパラと中を見る 古本らしいにおいが鼻を突いた どうやら翻訳された本のようで少し読みにくく感じた 翻訳された本は翻訳者の理解力や文章力で印象が変わる 内容が物語ならなおさらだ
「ふーん…」わたしは本条を待ってる間に本を少し読んでみた
「どう? 興味わいた?」
声の方に顔を向けると数冊の本を手にした本条が立ってた
「え?あ?」
本条に声をかけられるまでわたしは本の世界にいた
どのくらいの時間が経ってたかもわかんなかった
「へぇ そんだけ読んでんなら興味ありか?」
わたしの読んだページ数見て笑いながら本条は言った
「読みにくいんだけど先が気になる 絶対このあとなんかあるって思わされるもん」
わたしの感想に満足そうに笑みを浮かべる本条
「貸してやるから読んでみ? あとさ神楽のお勧めここで探して来てよ 借りてくから」
「任せとけ」 わたしはそう言ってお勧めの本を探しに立ち並ぶ本棚へ向かっていった
その後も本について話したりお互い読者に耽ったり、気づけばいつの間にか時間はお昼を大きく過ぎていた
「え もうこんな時間?」
ぼちぼちお腹空いたな、と思って時間を確認した
「そりゃ腹も減るわ」
本条も時間見て驚いてた
二人ともすっかり読書に夢中になってた
本来の目的通りの時間の過ごし方ができてた
いつの間にか【車輪の下】も三分の一ほど読んでた
「神楽 昼メシ食べに行かん?」
「えっ?」
「駅前に安くて美味いランチやってるとこあるんよ」
「いくいく どうせなんか食べなきゃだし」
「んじゃ決まりな」
なんか誘われたの意外だったけど嫌じゃなかった
その気持ちも素直じゃなかった
本条が連れてってくれたのは駅前の喫茶店だった
「ここのランチ安くて美味いんだ たまに弟たち連れてくるんよ」
そっか弟くんたちの面倒見てんだもんな
あちこち外食してても不思議じゃないよな
「いただきまーす!」
「このコロッケ美味し〜い スープもうまーい!」
二人して日替わりランチ食べながら図書館での話しをしてた
だけど時おり本条が見せる仕草が気になった
ちょっとそわそわ落ち着かないそぶり
「どした? 時間気になるの?」
わたしは本条に聞いてみた
「んーそんなんじゃないけど」
「言えんことなら無理しなくていいからね」
「そう言うんじゃないんだよなぁ…」
「なに? 今更こんなかわいいJKと二人きりなの照れるって?」
「それ冗談でも0点な!」
「うっせー」
こんな冗談言えるのも本条だからなんだろな
お互い笑いながら話せる仲だった
「あのさ神楽 後でちょっと例の公園行かん?」
例の公園? あぁ買い出し帰りに寄った公園のことか
「いいよん てか今日はあちこち誘ってくれんのな」
図書館から始まり食事に公園…まるでデートコースじゃね? なんて思って急に恥ずかしくなる
思わずデザートのアイスティーを手に取る
ゴクリ…一瞬で驚くほど喉が渇いてたのがわかった
一口でこんなにアイスティーの味を認識できたことなんて今までなかったから
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