第34話 花凛ちゃん
ー キーンコーンカーンコーン ー
お昼休みわたしは花凜ちゃんと一緒にお弁当を食べた
まずは腹ごしらえと言わんがばかりに
てか普通にお腹空いてた
わたしは食べるのが早かったので花凜ちゃんに慌てないで食べてねって声をかけた
言ってて自分でママみたいって思って可笑しかった
わたしがいつも言われてることだもんね
「ごちそうさま じゃちょっとネオンちゃんいい?」
「うん わたしはいいよ」
わたしは花凜ちゃんについて教室を出てった
「ごめんね わざわざ 大切なお昼休みの時間をわたしのためなんかに」
歩きながら話す花凜ちゃんの言葉はわたしへの気遣いで溢れてた
「みずくさすぎるぞ花凜ちゃん! わたしどんだけ世話になってると思ってんのよ!」
ほんとにそう思ってる 中学で花凜ちゃんに出会えてなかったら今のわたしはないかもなんだよ
「ありがと ネオンちゃん」
なんだか花凜ちゃんホッとしたように見えた
階段を降り中庭に出て日当たりのいいベンチに二人して座った
なんか花凜ちゃん緊張してる? その緊張がわたしにも伝わってくるようだった
「で、どうしたの?花凜ちゃん」
少しうつむき加減だった花凜ちゃんは意を決したかのように話し始めた
「あのね、ネオンちゃん ほんっとに誰にも言わないでね」
「もちろん 信じて!」
「わたし…気になる人が…いるの…」
ほんのり花凜ちゃんの顔が色づいたように感じた
一言一言発する度にその色は濃さを増すかのように思えた
「気になるって言ってもどうしていいかわからなくて、でもその人のこと考えるとドキドキしたりして こういうのってどうしたらいいんだろ」
え? そんなことわたしに聞く? それこそわたしの苦手分野じゃん! 花凜ちゃんだって知ってるくせにーー
「花凜ちゃん わたしに相談してくれんの嬉しいんだけど… あの、えと、わたしだよ!?」
情けないやら恥ずかしいやらだったけど 大切な話しだし もう一度ちゃんと花凜ちゃんに確認した
「わかってる だけどネオンちゃんだから聞いてほしかったの 今のネオンちゃんだから」
今のわたし…? ほんとはわたしが聞きたいくらいだった けど今は花凜ちゃんの話しを聞くことこそ大切だってわかってた
「花凜ちゃん、どうしてその人のこと気になるって気づいたかわかる? 意思してるって思ったのどんな時?」
質問してるけど これはわたしのことじゃないから
花凜ちゃんの想いを確かめたかった
「文化祭の実行委員とわたしたちクラスの係りとで何度か会議があったんね ほらうちのクラスお化け屋敷やったでしょ 実行委員の人は去年お化け屋敷やってたみたいでいろんなアドバイスくれたの」
「じゃあ先輩なの?」
わたしは花凜ちゃんが今話した内容から気になる人が先輩だと推察した
「うん 3年生…三輪さん」
花凜ちゃんは名前を教えてくれたけどわたしにはぜんぜん知らない名前だった
「だから受験だなんだ忙しい時期にいろいろわたしに構ってくれて大切な時間割いてくれた すごく頼れたし安心できた わたしが係りの仕事すんなりできたのも三輪さんのおかげかもな、って」
「文化祭も終わってしばらく経ってみて もう会う機会がなくなっちゃって そしたらなんか急に寂しいっていうか 三輪さんのこと思い出す時あって これってなんなんだろう?って」
なるほど…そうだよね わかんないことだらけだよね
だってそういう気持ち初めてなんだもん
誰だってはっきりこれが〇〇!だなんて初めてでわかるわけないんだから これだけなんでもスマホで検索して答えが手に入る時代になってても こんな大切な自分の気持ちなんてわかんないんだよね
「わたしに偉そうなこと言える程の経験もないんだけど 花凜ちゃんの気持ちはわかるよ 仮にわたしだったらこうするなーってのがあったとして花凜ちゃんにそれを話したところで いざわたしにその時が回ってきたら それを実行できるかはわからないけどね」
「どういうこと?」
「だって それほどわからないことないから 自分に置き換えて考えれないし その時のわたしがどうなってるかなんて想像もできないもん」
「だから 花凜ちゃんに言えることは言えたとしても それはわたしがいざそうなったらできることじゃないかもしんない…」
なにか気の利いたこと言えてる訳じゃなかった
花凜ちゃんの想いに応えれてる訳じゃなかった
でもわたしはわたしなりの精一杯を伝えなきゃって思ってた
「うん なんかわかるよ ネオンちゃんがすごく真剣に考えてくれてんのわかる 簡単に『なになにしちゃいなよ』なんて言えないもんね」
ほんと力になれなくてごめんね 花凜ちゃん
「三輪さんだっけ? 3年生だったらもう時間そんなにないよね?」
高3のこれからなんてあっという間だろうし
「そう だからわたしなんにもできないなって…大切な時期をわたしが邪魔したくないし かき回したくないから」
やっぱ花凜ちゃんだ 自分も気持ち大変なのに相手のこと思える
「じゃさ 三輪さんの受験終わってから行動に移そ?
ね? それまでに自分の気持ちもう少しはっきりするかもだし」
「うん そうだね それしかできないよね」
自分を納得させるかのようにつぶやく花凜ちゃん
なんかせめて今の花凜ちゃんの気持ちを少しでも昇華させてあげたいな
「だったらさ 三輪さんの応援しにいこ?」
「え?! どういうこと?」
「だからさ、文化祭のこともあるしお礼言いに行くの兼ねて三輪さんに受験がんばってくださいって言うの!! どうかな?」
「うん! うんうん!! いい! それすっごくいい!!! ネオンちゃんすごい!!」
花凜ちゃんの表情がパッと明るくなった
笑顔が戻っていつもの華やかさがそこにあった
「それくらいなら わたしにもできる! なにも今すべてを伝えなくてもいいもんね」
ちゃんと花凜ちゃん自身で理解して処理してくれてる
結局最後は自分で決めることなんだもん
わたしは花凜ちゃんの笑顔を見つめてた
「ネオンちゃんはどうなの?」
「ん? わたしがなに?」
「本条くんの こと…」
「本条のこと? 本条がどうかした?」
不意な花凜ちゃんの質問の内容を理解する前にわたしの思考は停止した
「いい感じなのかなぁ…って」
ちょ、ちょっと、花凜ちゃんなに言ってんの?
「いい感じ? なにが? えっ!? ちょっと花凜ちゃん!?!?」
やっと動き出したわたしの思考は花凜ちゃんの言葉をひとつひとつ翻訳してた
わたしに花凜ちゃんの言葉を理解させようと
「ないないないない!! いいとか悪いとかないから! そういうんじゃそもそもないから!!」
反射?反応?ってくらいの速さでわたしの口から出てた言葉はなにに対しての否定だったんだろう
「そうなんだ でもね だから今のネオンちゃんに聞いてもらいたかったんだよね わたしは」
そう言って花凜ちゃんは微笑んだ
自分の気持ちすらどうしたらいいかわかんないのに
わたしの気持ち勝手に理解しようとしないでよね
これはカノンにも言えることだけど…
「いろいろ想像してもいいけど わたしの気持ち勝手に決めないようにー! 男子苦手なの知ってるでしょ??」
わたしの答えにクスクス笑いだす花凜ちゃん
微笑みが笑いに変わる瞬間は受ける印象すら変えさせるんだって実感する
「うん そのネオンちゃんだからわたしはそう感じたのかな〜? でもわたしもわかんないんだしネオンちゃんもわかんないだけかもだよね」
そう言ってまた笑う花凜ちゃん
やめてよー変に意識させないでよー…
「あ、もうこんな時間 5時間目の用意しなきゃだね
ありがとね ネオンちゃん」
そう言って先に立ち上がると花凜ちゃんは座ってるわたしの手を取り立ち上がらせてくれた
「よかった わたしにはネオンちゃんがいて」
いろんな想いの詰まった花凜ちゃんの言葉
わたしの中にストンって入ってきたよ
花凜ちゃんと出会ってから今までのことが走馬燈?のように頭の中流れてた
いつまでこうしていられるかわからないからこそ
わたしはわたしの全力で花凜ちゃんに向き合おうって思えた
「わたしはその何倍もそう思ってるから!」
「ネオンちゃんずるーいっ!!!」
あっという間に過ぎたお昼休み
このあとの授業なんて頭に入ってくるんかな?なんて思わせるくらい頭ん中にいろんな感情があった
わたしは花凜ちゃんと手を繋いで頭ん中のいろんな感情と一緒に教室へと戻ってった
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