第23話 買い出し班




次の日のお昼休み、わたしは本条くんに昨日話してた文化祭の買い出しの話しを切り出した


「本条くん あのさ」


彼はわたしが近づいて来たのにも気づかないくらい本を読むのに集中してた

わたしの声が聞こえてからこっち見るまで少しの間があるくらいだった

わたしにはその理由わけがわかる気がした


「え なに神楽? どうした?」


少し面倒くさそうに、こっちの世界に帰ってきたかのようにわたしのこと見る本条くん


「えとね 昨日言ってた買い出しの件なんだけど 本条くんの都合も聞きたいし こっちの予定も伝えないとなっておもってね」


「そーね わかった 妹を保育園に迎えに行く都合もあるから 週末なら助かる 神楽の都合もあるだろうし お互い合わせなきゃだしな」


「わたしは週末なら大丈夫かな 一応それで考えとくね あとは帰って本条くんが家族と相談して?」


「おぅ んじゃそれで」


「ねぇ てかさっきわたしが呼んだのにこっち向くの遅かったじゃん 理由あててみよっか」


「ん なんのこと?」


「本条くんさ 本の区切りのいいとこまで読んでしまいたかったんでしょ?」


「あー、さっきのな! 正解!! さすがガチ勢!」


やっと笑った こうでもしないと教室で笑わないのか? めんどくさいやつ…って思いながらわたしも笑ってた


「わたしだからいいようなもんだけど 他の子には失礼にあたりますから注意するように!」


わたしは人差し指を立てて本条くんに諭すかのように言った もちろん冗談ぽく


「へいへい わざわざ誰もおれに話しかけてこんだろうけどな」


冗談ぽく笑いながら返事をする本条くん

それ冗談でもおもしろくないから…


「じゃ明日決めよ わたしもちゃんと予定聞いとく」


わたしは少し呆れながら捨て台詞のよう言って本条くんの傍から離れた


彼は気に留めようともせずまた本を読み始めた


「なんよ 自分で勝手に壁作ってるくせに 一人いじけてるみたいに そりゃ集中して本を読みたい気持ちはわかるけどさ それにしても卑屈に感じる!」


ほんの少しの会話 少しの時間 ただ用件を伝えたかっただけ なのになんでだかわかんないけど不安な気持ちになる 


『赤毛のアン』 『カラフル』 『片想い』


そのどれもがわたしと本条くんとの共通点

もっとあるかも知れない読んだことのある同じ本

花凜ちゃんとも同じ読んだ本で話してた時あった

すごく楽しかった 感想言い合って花凜ちゃんのこともっと知れた気がした

知りたかった訳じゃなくても知れた

わたしにとっての近道 相手のこと知れる近道


なにも本条くんのこと知りたいわけじゃないけど…

知ってしまったから…





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