第45話 真実と懺悔

 すると、そんな俺の感情とリンクするように隣に座っている一条が話しかけてきた。


「山藤君、私達危ないところだったんだね」

「そうだな、だからこういう事はもう二度としませんって親に誓った方がいい」


「でも、山藤君はそんな危ないところに何度も通ってたんだよね」

「・・・・・・それは、俺にはやらなきゃならない事があるからだ」


「それなら、私だって大切な友達の為にと思って行動してたよ?」

「いや、そういうのは専門家に任せるものだ」

「でも、行動の甲斐あって今があると思うけど?」


 確かに、一条の言う通り今があるのは全部一条と出会って、一条と行動を共にしたが故にあるのは分かっていたが、それでもそれを納得することは出来なかった。


 なにせ、実害がある上にその関係者にまでその手が及ぶ寸前までいっていた。


「そもそも、一条はずいぶんな目にあったのになんでそんなに落ち着いてられるんだよ」

「それは、私にもやるべきことがあったから?」


 なぜか疑問形で口にした一条は、そういった後はクスクスと笑って見せた。それはまるで一連の事件が終わった後のようなものだった。

 だが、事件はいまだ完全解決には至っておらず、その重要参考人はいまだ沈黙を貫きながら助手席にうなだれて座っていた。


 すると、一条の親御さんが花輪麗子に話しかけた。


「花輪麗子さん、少しお話を聞いてもいいですか?」


 その問いかけに花輪麗子はわずかに顔を上げた。


「あなたは、何者ですか?」

「私は、この辺りで頻発している未成年失踪事件についての調査を行っている者です」


「刑事さんですか?」

「いえ、検察です」


「下山勉が捕まったというのは本当ですか?」

「えぇ、すでに公になっている情報ですよ」


「あいつは、自分がやったことを認めたんですか?」

「いいえ、ですがあらゆる調査の結果犯人で間違いないと判断された様子です」


「あいつは罪を認めていないんですか?」

「下山勉は心神喪失状態で受け答えも不明瞭です」

「くそがぁっ」


 唐突に大声を上げた花輪麗子は、取り乱した様子で頭を掻きむしり始めた。その声に隣の一条が体を跳ね上げながらわずかに俺に体を寄せてきた。


「くそくそくそっ、どれだけ私が身を削って来たかっ、今日までどれだけの事をやって来たと思ってるっ」

「花輪麗子さん落ち着いて」

「全てはあの子ため、全てはあの子の為だったのに、警察なんかにつかまりやがってくそがぁっ」


 まるで理性を失った様子を見せ始める花輪麗子に対し、一条の親御さんはどこか手を出せない様子で困惑していた。

 だが、花輪麗子は突如として落ち着きを取り戻した様子を見せた。その様子に一条の親御さんが話しかけると、彼女は静かに返事を返した。


「すみません、少し取り乱してしまいました」

「いえ、それよりもあなたにお聞きしたいことがいくつかあります、答えていただけますか?」


「いいですよ、どうせもう全部終わったので」

「全部終わったとは?」

「私の体も心も、もう限界なんですよ・・・・・・」


 そう言うと、花輪麗子は気を失ったかのように助手席の窓ガラスに頭をぶつけると、微動だにしなくなってしまった。

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