第44話 失望と狂気

「その話本当なのっ!?」


 強い語気と、鬼気迫る様子の表情をする花輪麗子は俺につかみかかって来た。


「本当です」

「嘘よっ、そんなわけがないっ」


 そう言うと、花輪麗子は携帯端末を取り出すと、画面に食い入るように見つめ始めたかと思うと、呆然とした様子で携帯端末を地面に落とした。


「う、嘘よ、そんなことがあっていいはずがない、あいつは私が捕まえてやるはずだったのに、そんな・・・・・・」


 花輪麗子はどこか様子のおかしい様子でフラフラとし始めると、その場で座り込み始めた。

 それにしても、彼女は今、自らが捕まえるつもりだったと発言していたが、もしかして彼女が頻繁にこの場所に訪れていたっていうのはそういう理由もあったという事なのだろうか?

 なんて事を思っていると、一条が花輪麗子に歩み寄り、心配した様子を見せ始めた。


「うわわ、どうしよう山藤君、この人体調崩しちゃったのかな?」

「気が動転してるんじゃないのか?」

「私が探偵ごっこで追い詰めたからかな」


 どうやら一条自身にもそういう自覚があっての行動だったようだ。


「そんなことないだろ、とにかく、今は一条の親御さんを待とう」


 そうして、喪失状態の花輪麗子を一条に任せつつ、俺たちはKトンネルで一条の親御さんを待っていると、車のまぶしいライトと共に見覚えのある車がトンネルの入り口付近に停車してきた。

 そして、車から降りてきたのは一条の親御さんであり、彼はすぐに一条の元へと向かった。


「まろん、お前というやつは本当に心配ばかりかけてっ」

「だってだって、家にだれか入って来たんだよ、すごく怖くて仕方なかったんだから」


 一条は必死の言い訳を口にすると一条の親御さんは大きなため息を吐いて安心した様子を見せた後、俺に目を向けてきて軽く会釈してきた。


 そして、一条の親御さんはすぐに花輪麗子へと目を向けた。


「・・・・・・それで、彼女が花輪麗子か?」

「うん」

「そうか、ひとまずみんな車に乗りなさい、話はそこでする」


 そうして、俺たちは一条の親御のお車へと乗り込んだ。運転席に一条の親御さんその隣の助手席には花輪麗子。

 俺と一条は後部座席へと乗りこむと、一条の親御さんが俺に話しかけてきた。


「山藤君、電話でのことは伝えてくれたんだね?」

「はい、そのことを伝えたら彼女がショックを受けたみたいで」


「そうか・・・・・・」

「それで、下山勉という男に関しての情報は本当なんですか?」

「あぁ、すでに情報公開もされている、携帯で調べたらすぐに出て来るよ」


 なるほど、じゃあ花輪麗子は携帯端末でその記事を発見して事実確認をしたわけだ。

 それにしても、改めて思ったのだが、まさか一条と一緒に出くわした男の正体が看護師殺害事件の犯人だったとは・・・・・・俺たちは相当危ない目に合うかもしれなかったというわけだ。

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