第43話 あっけない結末
「山藤君、今どこにいる?」
聞こえてきたのは男の声、そして、それが一条の親御さんであるような気がした。
「あの、一条の親御さんですか?」
「そうだ、家に帰ったら誰もいないし窓ガラスも割れてる。娘もいない、何かしらないかっ!?」
「一条なら、今、俺と一緒にいます」
「どうして君と一緒にいるんだ?」
「実は、少し前に一条から家の周りに不審者がいるって電話が来たんです」
「不審者?」
「はい、それで家に向かったら、不審者が家に侵入してきたので夢中で逃げてきたところです」
「じゃあ娘は無事なんだね」
「はい」
「それで、君は今どこにいるっ!?」
「S山のKトンネルです」
「なっ、よりによってどうしてそんな所にいるんだっ」
「すみません、つい癖で」
「娘はどうしてる?」
「それが・・・・・・」
「それがどうしたんだ?」
「いま、花輪麗子さんを尋問中です」
「な、なんだってっ!?」
「一条がどうしてもここで決着をつけたいと言い出したので、あの、俺はとめたんですよ」
「そうか、まったくうちの娘は・・・・・・」
えぇ、親御さんに似てとても正義感の強い娘さんですよ、と、言いたかったが、そんな状況でもないだけにその言葉を飲み込んだ。
いや、それよりもこれで一条の身の安全が確保されそうなのは助かる。あとは、この場を穏便に済ませればいいだろう。
「あの、今すぐにでも家に戻った方がいいですよね」
「いや、いい、私が迎えに行こう。Kトンネルだったね?」
「はい、すみません」
「いいんだ、それよりもそこに花輪麗子がいるんだね」
「はい」
「ならちょうどいい、伝えてほしい事がある」
「なんですか?」
「花輪麗子の同僚を殺害した犯人が捕まった」
「え?」
「名前は
そう言うと電話が切れた。唐突な告白に動揺しながらも、俺は一条の親御さんから伝えられた情報を一条と花輪麗子に伝えるべく、二人に歩み寄った。
「あの、少しいいですか?」
「山藤君、電話の相手は父さん?」
「そうだ、迎えに来てくれるそうだ」
「そう」
「それで、伝えたいことがあって」
「何?」
俺は一条の顔を見つめた後、花輪麗子へと視線を移すと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「な、何?」
「実は、花輪さんに伝えたいことがあって」
「え?」
「下山勉という男が逮捕されました」
その言葉を口にした途端。花輪麗子の顔を引きつらせると、そのまますごい勢いで俺の元へと歩み寄って来た。
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