第42話 届かぬ追及
「それで、あなたは私にどうしてほしいっていうの?」
「どうしてこんな事をしているのかを教えてほしいんです」
「言うわけがないでしょう」
「どうしてですか?何か後ろめたい事でもあるんですか?」
「無いわよ」
「なら、どうして花輪さんはこんな事をしているんですか?」
「前にも言ったでしょ、ただのバイトよ」
「そんなバイト聞いたことありませんよ、もしあるなら私にも紹介してください」
「ふざけないで、もういいでしょうっ!?」
花輪麗子は会話を切るように声を荒げ、そっぽを向こうとしたのだが、一条は花輪麗子の腕を掴んだ。そのあまりにも積極的な行動に緊張感が高まった。
「ちょっと、何をするの?」
「あなたが幽霊でないことを確かめたまでです」
「あ、あなた何を言ってるの?」
かなり困惑した様子を見せる花輪麗子に俺は同情した。誰だってそう思うだろう。
「あの精神病棟で何が起こっているのか、教えてください」
「だから、私は何も知らない」
「じゃあ、どうしてあなたは精神病棟の理事長と頻繁に会っているのですか?」
「・・・・・・そ、それは」
「職場復帰を要望されたのですか、それとも言えない事を話し合っていたのですか?」
「そんな事、あなたに話す義理は無いわ」
「私の大切な友達が被害にあってるんです。彼女は精神病棟の理事長に警察をチラつかせて入院を強制してきたんですよ」
「まさか、そんな事ありえないわ」
「彼女以外にもたくさんの若い子たちがあの病院に入院していると聞いています。そんな事があっていい訳がありません」
「あのね、入院するのはそれなりに理由があるからよ、それに親の同意だって必要なの、そんな簡単に未成年を入院させることが出来る訳ないでしょう?」
「でも、それが起こっているから私はこうしているんです」
「何よ、私が関与していると言いたいの?」
「はい」
「・・・・・・」
「教えてください、あなたはどうしてこんな所でこんな事をしているんですか?」
「あなたに言う義理は無いわ」
そうして、一条の積極的な追及が届かない状況の中、俺の携帯端末が震えていることに気づいた。
すぐさま、ポケットから取り出して画面を確認すると、そこには一条という文字が表示されており、俺は思わず一条の事を見つめた。
すると、彼女は俺の視線に気づいた様子でこっちを見てきた。
「何?」
「いや、お前から電話」
そうして、俺は一条に携帯端末を見せると彼女は驚いた様子を見せた。
「私、形態は家に置いてあるはずだから、誰かが家から山藤君にかけてるのかも」
「じゃあ、一条の親御さんか?」
「そうかも、出てみて」
「あぁ」
そうして、俺は着信に応答した。
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