第33話 三つ目の資料
資料には【精神病棟内における看護師殺害事件】という題名のつけられており、その資料に目を通していると、どうやらその事件はいまだに未解決の事件であることが分かった。
どうして、こんな事件の資料を出してきたのだろうかと、俺は一条の親御さんに話しかけると、彼は暗い表情を見せながら黙り込んでいたが、すぐに口を開いた。
「この事件はあのS山にある精神病棟で起きた事件の一つだ」
「どんな事件だったんですか?」
「入院患者の男が女性の看護師を殺害したという事件であり、犯人は現在も逃亡中の未解決事件だ」
「そ、それが今回の事件と何か関係があるんですか?」
「それは分からない、だが、君たち次第で変わるかもしれない」
「俺たち?」
俺は犬飼さんとかを見合わせた後再び一条の親父さんに目を向けると、一枚の写真を取り出して見せた。
そこには一人の看護師の女性のが写されており、それはどこかで見たことがあるような顔をしていた。
「この人は、もしかして被害女性の方ですか?」
「彼女は殺害された看護師の同僚で、被害者と深い交流があった人だ。この人に見覚えはあるかな?」
俺と犬飼さんは写真を凝視していたのだが、いまいちピンとこない状況にもやもやとしていると一条の親御さんが口を開いた。
「ちなみにまろん、いや、娘にも見せたのだが彼女はどうやら心当たりがある様子を見せていたが、それをはっきり口にはしなかった」
「一条も見覚えのある人・・・・・・」
どこか引っかかる女性の顔、だが、それが誰なのかを思い出せない状況の中、犬飼さんが大声を上げた。
「あぁっこの人っ、山藤君っ」
犬飼さんは興奮した様子で俺の事を見つめてきた。
「い、犬飼さんは見覚えがあるんですか?」
「もちろん、彼女はKトンネルでバイトをしているっていう女性だよ、何度も出会った」
「Kトンネルでバイト・・・・・・?」
そう思えば、一条と夜釣りに行った時にそんなことを言っていた女性がいたような・・・・・・ん、もしかして心霊写真の女性の事か?
「間違いないですよ、メイクは違いますが間違いなく彼女です」
「犬飼君、知っているんだね」
「はい、彼女はKトンネルに頻繁に表れる女性です」
「彼女はなぜそんな所に?」
「彼女の話では、あの場所で散歩しているだけのアルバイトをしているとのことでした」
「アルバイト?」
「はい、週に数回、不定期ではありますが頻繁にトンネルに現れます」
「それは実に興味深いな、何か不審な点を感じたことは?」
「あんな場所にい一人でいる時点で不審ですが、何よりも平然とした様子でアルバイトをこなしている彼女の様子はどこか不気味に感じました・・・・・・まるで、何か強い信念みたいなものを感じました」
「強い信念・・・・・・」
一条の親御さんは真剣な表情で資料を見つめながら考え込む様子を見せ始めた。そして、俺は写真の女性が犬飼さんの言う通りトンネルをさまよう女性、そして一条と俺の認識で言えば心霊写真に写る女性の姿とリンクしていた。
「ところで、山藤君はこの写真の女性について心当たりはあるかな?」
「あります、ですがそれ以外は何もありません」
「そうか」
「それにしても、どうしてこんな話を?」
「それは、彼女がこの三つの事件に関連しているかもしれないという事だ」
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