第32話 混ざりあう事件
「まず、私が調査している件は、S山にある精神病棟において違法な収容疑惑が行われているという事。そして、犬飼君は未成年失踪事件についての調査だったね」
「はいっ」
「では、その二点を中心に事件を整理したいんだが、まずは未成年失踪事件に関しての確定情報を聞かせてくれるかな犬飼君」
「はい、S山における今年の未成年行方不明の件数は四件です。現在も行方不明として未成年者の行方は分かっていません」
「行方不明者の最後の足取りは?」
「すべてKトンネルで、たむろしているという目撃情報があります。それを最後に目撃情報は途絶えています」
「では、Kトンネルで何かがあったと」
「はい、当時の現場には市販の咳止め薬の残骸が多く確認されていましたから、乱用による錯乱で山中奥深くに遭難してしまったという見解がありました」
「私もその件については耳にした事がある。しかし、警察はこの件をあまり強く追っていない様子だったが、その点はどうかな?」
「はい、これだけの事件だというのに捜査班はあまり乗り気ではない様子でした。それどころか、四度も続く失踪事件とあって捜索は途中で打ち切り、うやむやで終わっています」
「うやむやか」
「はい」
「・・・・・・犬飼君、この一連の事件について、私はすべてつながっているんじゃないかと予想している」
「つながっているとは、具体的にどのような所でしょうか?」
「まず、未成年失踪の事件発生現場はあの場所で全て起きているのは確かなんだね」
「はい、四件とも行方不明者の私物と思われるものがあの場所で発見されています」
「そうか、実はS山の精神病棟では薬物依存の治療を行う施設が併設されているのは知っているかい?」
「その件については山藤君と調べたことがあります」
「そうか、おそらくだがそこで多くの未成年が収容されているという情報がある」
「では、行方不明になった未成年というのはそこにいるというのですか?」
「確定ではないがその可能性もある。未成年の薬物依存という実態はあまり表向きに出てくる話題ではないからね、保護者が内密に処理しているのだろう」
「ですが、そうなると我々にできる事はあるのでしょうか?」
「ある・・・・・・そしてもう一つ、今回の事件に関連する興味深い事件を一つ見つけた」
そうして、一条の親御さんは一度お茶を飲んで休憩をはさんだ後、カバンの中からもう一つの資料を取り出した。
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