第31話 一条検事
「ずいぶんと自己紹介が遅れたね山藤君、私は
「いや、一応検事ってどういう事ですか」
「何事もあいまいな方が良い事もある、今回はそこにいる犬飼君に検事だとばらされたからそういう風に言っただけだ」
「そ、そうですか」
どこか棘のある言い方に犬飼さんは緊張した様子で固まってしまっていた。
「ところで会議という話だったが、君達はどんな会議をする所だったんだい?」
「・・・・・・いや、それは」
「精神病棟の件かい?」
「まぁ」
「では、未成年失踪事件の事?」
「えぇ」
「はっきりしないな山藤君、昨日の勇敢な口ぶりはどうしたんだい?」
「いや、だって一条の親とまさかこんな話するとは思っていなかったので、困ります」
「そういわないでくれ、私としても娘が巻き込まれた以上、本腰を入れてやらなければならなくなったのでね」
「あの、精神病棟の事は詳しいんですか?」
「勿論、色んな疑惑はあるからね」
「そうですか」
「ところで犬飼君、君はどうしてこの件に興味を?」
「私はこの辺りで駐在をやっているのですが、ここ数年で私が補導した少年少女が行方不明になったという事件を聞いて、いてもたってもいられなくなりましたので、時間があれば調査をと思いまして」
「そうか、勿論情報漏洩はしていないだろうね」
「はい、公開情報を頼りに、ここにいる山藤君と推論を繰り広げているまでです、探偵ごっこの様なものです」
犬飼さんは一言一句をしっかりと口にすると、一条の親御さんは納得した様子で何度か頷いた。
まぁ、犬飼さんは本当に愚直で良い人なんだよ。だからこそおれも彼に手を貸しているってわけだ。
「なるほど、では山藤君はどうしてこの件に興味を持っているんだい?」
「・・・・・・一つは犬飼さんのお手伝い、もう一つ、あの山は山藤家先祖代々の土地なものでして、あまり穢れた事をされると気分は良くありませんので」
「そうか、あの辺りは君の家の」
「はい、本当にただそれだけのことです」
「そうか」
大方、互いの事情を知り得たところでその場にいた全員がお茶に口をつけた。そして再び話し始めたの一条の親御さんだった。
「それでなんだが、私もその探偵ごっことやらに参加してもいいのかな?」
「勿論です」
犬飼さんは元気よく返事し、俺もすぐにうなづいた。
「そうか、じゃあこの場の仕切りは誰にする」
俺は一条の親御さんを見つめ、犬飼さんは彼に頭を下げていた。
「私でいいのかな」
「はい、お願いします」
「わかった、じゃあまずはあの山で起こっている疑惑についての整理をしよう」
「はい」
そういうと一条の親御さんは手持ちのカバンからいくつかの資料を取り出して机の上に並べ始めた。
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