家
家に入った。一目散に部屋へ逃げ込んで、見慣れた様子に腰を下ろす。
部屋に帰ってからは、やることが無い。
特別、機嫌の悪くない限り自分へ矛の向くことは無いけれど、部屋までの間はどうしても身構えてしまう。怒鳴られてしまうのではないかと。
私はふと、思った。そして、この儘その方向へ思考を向けようとも思った。
昔。とは言っても、私が幼少であった頃の昔は酷かった。毎日、成人から四分の一も離れた私からすれば怪獣 対 怪獣の頂上決戦のように思えた。
特に、父は自身の勝利の為の手段を問わなかったように思える。感情に任せた言葉を赴く儘に振り回していたし、不理解への怒りとしてモノへの実力行使に出ていた。そして、彼らの余剰したエネルギーの矛は私へとむけられた。
決して、悪い人ではない。今はそういうことは本当に無いし、私を思ってくれていることはわかる。私は彼を尊敬している。
だけれど、怖いのだ。理性的な恐怖というよりかはもっと本能的な、反射的なそういった類の、腹底から湧き上がる恐ろしさだ。
彼を前にすれば、恐怖が足をつかむ。手をつかむ。喉元まで来た言葉さえも奥へとつかんで引きずり込んでしまう。
此の、恐怖が憎い。体のどこかへ一か所に集めて、そのままそこを切り落としてしまいたいくらいに憎い。
そうしていると、いつの間にかご飯ができていたようでそれから私はご飯を食べて、お風呂に入ってからベッドの上で時間の焦りを感じながら寝た。
掻き曇る明け方 知目 @time_fish30
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