第4話
「ここだよ。」
そう言われて着いたのが、恵美子さんのお家だった。とても綺麗なマンションだ。
「わぁ…!」
部屋がとても整っている。
とても綺麗なお部屋だった。
「カレー作っちゃうね」
と、用意されたのは先程ドンキホーテで買ったパジャマだった。
ボロボロだった服が、ピカピカの新品になった。
結局、お母さんは来なかったけど…
無断欠勤ってやつだったらしい。
「暖かい…」
ストーブの前で、じっと固まっていた。
こんな暖かいなんて、初めてかもしれない。
「奏多くん、好き嫌いある?」
「ない…です」
まるで、母親のようだった。
こんなお母さんだったら…いいのに。
「私ね、子どもいたの。だけど自立してから育ててなくてね。リカを見てたら、話だけはいっちょ前なのに。こんなんなってるなんて知らなかったしね。」
手馴れた手付きでカレーをコトコトと煮込む。
「奏多君はさ、ママのこと好き?」
「…うん」
「どんな所が?」
「…わかんない」
「わかんない、か。そっか。」
切なそうに笑う恵美子さん。
僕は、お母さんのどこが好きなんだろう?
正直、分からない。
だけど、お母さんって気持ちがあるから
好き…なんだと思う、けど
この変な、無駄な感情はなんなんだろう。
見捨てられない?
違う
僕は見捨てられた側だ。
案の定、恵美子さんに
なんの連絡もないらしい。
この思いが
段々憎いに変わるなんて
思いもしなかった。
「出来たよー」
と、出されたカレーライスに、僕は感動して
泣いてしまった。
「泣くことないじゃな…リカ、ご飯作ったことは?」
「ない…です…」
「腹たってくるわね。本当。」
と、言いながらも食べ始めた。
「美味しい…美味しい…!」
泣きながら食べる僕を見て
「泣いちゃうのはこっちもよ」
と、もらい泣きをしていたようだった。
「こんなカレーライスで泣くだなんて…」
「美味しい…です。」
「ありがとう。」
黙々と食べて、初めておかわりをした。
「いっぱい食べなさい」
と、よそってくれた。
恵美子さん、本当に感謝しています。
ベリーショートケーキ 柊 こころ @viola666
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