13夏休みの計画
団地内の怪獣騒ぎは続き、危険な貯水池に子供が近づかないよう、外出を制限する親たちも出始めていた。ナオトにはもう一度沼に向かう必要があったが難しくさせ、部活では平静を装いマサルが口を滑らさないか注意が必要だった。今日は大人しく頓挫していた課題に集中することにする。幸い境先生は職員会議に出ていて子供だけの部活動になった。
「ナオト、沼にはいつ行けるの?」
そう考えている側からマサルの口から沼の話題が出てきて閉口するナオト。全く油断できない。渋い顔で目を瞑っていると先にキョウコが口を開いた。
「マサルくん、しいいいい」
口に人差し指を当て大袈裟な表情で嗜めている。そのままナオトにチラリと視線を送り何か答えを待っているようだった。キョウコの方も今では沼の秘密に囚われていて長い睫毛から見え隠れする瞳には、好奇心が見て取れた。
「二人とも聞いてくれ。今団地で沼は注目を浴びている。下手に動けば本格的に規制が入るだろう。すでに咎められた生徒もいるらしい。僕に考えがあるのでその時まで二人には我慢してほしい」
「その時っていつなの」
マサルの容赦ない追及にはちゃんと答えてやらないと納得しないだろう。キョウコもナオトの立場でいてくれるとは思うが、ここまで積極的に興味を示したのは、初めてだったのでキョウコにも話す責任があると思った。
「夏休みの町内盆踊り大会の日に決行する」
大袈裟な言い方になったがその口調にマサルとキョウコは目を輝かせた。口から出まかせではなく論理的根拠がナオトにはあった。学校側からの監視を逃れ、外出の理由にもなる町内会の最中抜け出そうというのである。その計画は例年通り盆踊り大会が開催されるかに左右される。キョウコにそのことを指摘されたが、今の騒ぎは早々に収束すると楽観的に考えていた。
「親は神経質になってはいるけど子供も飽きっぽいところもある。中沢さんの取材も記事として取り上げられるかはまだ先のことだろう。とにかく今は大人しくして待つことが得策」
二人はナオトの顔を見て納得はしてくれたようだ。それとは別にナオトには二つの不確定な要素が気にかかっていた。それはキョウコとマサルにあの秘密の入り口は果たして開いてくれるのかということ。ミカとの秘密がこうして公になりそのことが裏切りの行為のように思えてしかたなかった。ミカは許してくれるだろうか?そもそも未だ意識の戻らないミカを救う目的で始めたことだ。そして僕たちと友達になったあの大きな生き物はこのことをどう思っているのだろうか。そんな考えが頭の中を堂々巡りしていく。
もう一つはこの度の騒ぎの原因になったもう一つの怪物。想定外の出来事でナオトを悩ませる存在。次の沼への来訪に不安を抱くナオトであったが、屈託のない弟とキョウコの笑顔がミカのことを少し忘れさせた。
夏休みまであと一週間。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます