あたりまえは当たり前じゃない
朝、目が覚めた。
不意に感じる懐かしい静けさ。
知らなかったはずの寂しい感じもする。
なんでこんなに静かなのは寂しく感じるんだろう。
「???」
なんて言っているんだろう。私には分からないや。まるで私と違う言葉…
「…?!」
怒号、絶叫。なんだか嫌な予感がする。
「おじさん?どこー?」
小さな声でおじさんを呼んでみた。
でも返事がない。
それに、むせかえりそうな嗅いだことないにおい……!
「おじさん!」
気づいてしまった。
寝ていたはずの地は
灰になって真っ黒。
そばで寝ていたはずのおじさんは
人間に捕まっている。
それにぐったりして元気がない。
私は体が小さくてまだ見つかってないみたい。
ときどき大きな音もして
むせかえりそうなにおい。
「……そのままだ…」
おじさんがしゃべってる!
「お前はそのままそこに居ろ……大丈夫…見つかりはしないさ。小さいからな…」
おじさんは丈夫に笑って見せた。
そうして引き摺られて行った。
大きな何かに乗せられて
そのまま遠くへ…見えなくなった。
追いかけたかったけどこわくてこわくて仕方なかった。
だって……
おじさんの匂いが…血の匂いがするんだもん。
お腹が空いた。
やっぱりここらはもう灰になっていて食べる草がない。
ずっと座っていたから足が震えている。
でも食べなきゃ。
そうだ。
あの静かなところに戻ってみよう。道草でも食べながら。
静かなあそこならゆっくり考えられる。
行くとこ全てが黒い世界。
目的地もそれは同じであった。
まだ食べられる草をちまちま食べながら足を動かした。
川も木も枯れて
チョウやトンボなんてもう居ない
仲間もいない
誰もいない
またひとりぼっちなんだ。
カラスだけは私を見下ろしている。
見下ろす…?
見下ろせばいいさ、好きなだけ。
そのうちお前も止まり木なんか無くなって泣くことになるからな。
水が飲みたくなって
昨日降った雨の水溜りに顔を近づける。
私ってこんな顔してるんだ。それに…
もう背中の模様はない。
大人になったんだ!
体は小さいままだけど
やりたいこと、全部やろう!
と言ってもひとつしかない。
私……僕のやりたいこと。決まってるよ。
知りたいことはもうない。
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