第9話 未知の扉
朝の光が差し込む建物内部。三人は慎重に足を進める。
リアはクロックハートを手に、微かな反応を頼りに進む。
アッシュは剣を握り、周囲の異常を警戒する。
ミルダは機械装置の動作音に耳を澄ませ、慎重に足を運ぶ。
突然、建物の奥から不穏な光が立ち現れた。
それは古代の機械か、それとも……未知の力そのものか。
三人は息を呑む。光が揺れ、空間が微かに震える。
リアはクロックハートの鼓動を感じ、次の行動を決める。
アッシュは構えを固め、覚悟を決めた。
ミルダは目を見開き、慎重に光の方向を観察する。
その瞬間、未知の力が三人の前に姿を現した――。
朝の光が薄暗い建物の隙間を縫って差し込む。埃が舞い、足音は静寂の中で小さく響いた。三人は呼吸を整えながら、一歩ずつ奥へ進む。
リアは手にしたクロックハートの微かな光を頼りに、前方を見据える。光は淡く揺れ、まるで何かを示すかのようだった。
「……ここが、旧世界の遺産の眠る場所……?」リアの声は小さく震えていた。
アッシュは剣の柄を握りしめ、周囲に気を配る。床に伝わる微かな振動が、何かが潜んでいることを告げていた。
「油断するな。何が出てくるか分からない。」アッシュの言葉には緊張が滲む。
ミルダも装置を操作しながら、光の動きを注意深く追う。古びた建物に残る謎の機械の陰影が、未知の力をさらに不気味に映し出していた。
突然、空間の中央に形の定まらない光が立ち現れる。鎧のような輪郭を帯びながらも、内部から脈打つ光が生き物のように揺らめく。それは現実とは違う異質な存在だった。
「行くわよ、クロックハート!」リアの声に力が宿る。クロックハートの光が強まり、リアの手に熱と力を伝えた。
アッシュは一歩前に出て剣を構える。鼓動が耳の奥で跳ねる。
「俺が抑える、リア、お前は思い切り行け!」
ミルダも目を凝らす。「まず状況を把握する、分析は後!」
未知の力はゆっくりと形を変え、三人の前に立ちはだかった。静寂が張り詰め、床や空気を震わせるその存在感は、圧倒的だった。
三人は互いを見やり、息を整える。心臓の鼓動が緊張で高鳴る。――そして、旧世界の遺産の眠る場所で、最初の遭遇が幕を開けたのだった。
未知の力は光の粒子をまとい、ゆっくりと三人に向かって動いた。空間が微かに歪み、周囲の空気がざわめく。リアはクロックハートを握りしめ、手に力を込める。光が指先から迸り、まるで意思を持つかのように変化する。
「来る……!」リアの声が震えた。
アッシュは剣を抜き、構えを低くする。筋肉が緊張し、全神経が一点に集中する。未知の力が繰り出す波動を見切ろうと、目を凝らした。
ミルダは小型の装置を操作し、分析の光を放つ。「エネルギー反応が不安定……パターンを読めれば!」
突然、未知の力が手を伸ばすように光を放った。アッシュは反射的に横へ飛び、剣で斬り払う。光は鋭く空気を切り裂き、床に衝撃波を走らせる。
リアはクロックハートを高く掲げ、光を一点に集中させた。「ここで……!」
一瞬の閃光とともに、未知の力に直撃する。光の反動でリアはよろめくが、クロックハートは強く輝き続け、敵を押し戻す。
アッシュもすかさず突進し、剣先を叩きつける。金属と光の衝撃が響き、未知の力は形を崩し、一瞬の隙を見せた。
ミルダが指示を出す。「今よ、リア!フルパワーで!」
リアは全身の力を込め、クロックハートから放たれる光を最大まで解放する。光は渦を巻き、未知の力を包み込み、圧倒的な力で押し潰した。
轟音と閃光の中、戦闘は終わった。静寂が戻り、三人は呼吸を整える。リアの手からクロックハートの光がゆっくりと鎮まり、微かな余韻を残す。
アッシュは剣を下ろし、額の汗を拭った。「……決まったな。」
ミルダも安心したように息を吐き、装置の光を消す。「やっと……一歩前に進めたね。」
三人は互いを見つめ合い、疲れと安堵が交錯する中、未知の力の眠る場所へ、さらに奥へと進む決意を新たにしたのだった。
廃墟のような建物の中、三人は静かに足を踏み入れた。床は埃に覆われ、時折ひび割れた瓦礫が足元で崩れる。壁に残る古い装飾が、かつての栄華をかすかに語っていた。
「ここが……旧世界の遺産が眠る場所……?」リアは囁くように言った。手にしたクロックハートが、微かに振動する。まるでこの建物の奥に何かが待っていることを告げるかのようだった。
アッシュは剣を腰に置き、慎重に周囲を警戒しながら進む。小さな音も聞き逃さないよう、耳をそばだてる。
ミルダは光学装置を前にかざし、建物内部の構造を解析する。
「あの書物に反応した光……あそこに集中してるみたい。」
三人は階段を降り、暗い通路を抜ける。空気は冷たく、湿った匂いが鼻をつく。遠くで、かすかな光がちらつく。
リアが立ち止まり、クロックハートをかざす。
「あそこ……光が動いてる……」
アッシュは頷き、剣の柄に手をかける。
「準備はいいか……?」
「もちろん!」リアが答え、クロックハートから小さな光の粒が飛び出す。
その瞬間、奥から未知の防御機構が作動した。光の壁が通路を塞ぎ、微細な振動が建物全体に響く。
「くっ……!」アッシュは剣を振りかざし、光の壁を斬り裂こうとするが、クロックハートの光が反応し、壁の一部を淡い光に変えていく。
ミルダは機器を操作し、壁の構造を解析する。
「リア、クロックハートをここに……!」
リアは指示に従い、光を集中させた。瞬間、光は壁の防御を貫き、通路は再び開ける。
三人は息を整えながら、一歩一歩奥へと進む。
奥の広間に辿り着くと、そこには古代の装置と書物、そして淡い光を放つ台座があった。
台座の上には、小さな箱が静かに輝いている。
リアはクロックハートを高く掲げる。
「これ……これが旧世界の遺産……?」
アッシュも立ち止まり、剣を下ろす。ミルダは装置を慎重に解析しながら頷いた。
「間違いない……これが、私たちが探していたものだ。」
三人はその光景を見つめ、次の冒険へ進むための決意を新たにする。静寂の中に、古代の力の余韻だけが漂っていた。
台座の上で淡く輝く箱に、リアの手が触れた瞬間――光が跳ね上がり、三人を包み込む。目を開けると、空間そのものが揺らぎ、見慣れぬ紋様が壁や床に浮かび上がった。
「……これは……!」ミルダが息を飲む。手元の機器も信号を拾いきれず、警告音だけが鳴り続ける。
アッシュは剣を構え、周囲を警戒するが、その光に目を奪われて一歩も動けない。「何だ、この力は……!」
箱の中から淡い光の渦が立ち上がり、空間をねじ曲げるように舞い上がる。クロックハートも光を増し、リアの指示で渦の中心に向かって小さな光を放った。
「リア、気をつけろ!」アッシュの声が響く。だが、リアの眼差しは迷いなく渦に向かっていた。
渦が最高潮に達した瞬間、周囲の空間が静止したかのような錯覚が訪れる。そして、箱の光が一気に収束し、中央の台座に古代の装置が姿を現した。
「……これが、旧世界の遺産……。」
リアの声は震えていたが、希望と決意が混ざっていた。
ミルダもそっと装置に手を伸ばし、解析を開始する。「信じられない……こんな力が、まだ残っていたなんて……。」
アッシュは剣を鞘に戻し、三人を見渡す。
「よし……これで、次の手がかりは掴めた。あとは、俺たち次第だ。」
古代の力の残滓が微かに輝き、静かな余韻だけが広間に残った。三人は息を整え、次の冒険へと歩みを進める――未知なる世界の奥深くへ。
建物の床が低く振動し、天井から無数の細い光線が降り注ぐ。警報の赤い光が三人の影を揺らす。
「くそ……動きづらい!」アッシュは剣を握りしめ、飛び出す光線をかわしながら前に踏み出す。
ミルダは手元の装置を操作し、クロックハートを輝かせる。
「リア、あの光に集中! 防衛機構を封じるのよ!」
リアは深呼吸を一つし、クロックハートを強く握った。淡い光が腕を伝い、周囲の光線を反射させる。瞬間、細い光線が次々と消え失せ、防衛機構のセンサーが一瞬乱れた。
「今だ、アッシュ!」ミルダの声に呼応し、アッシュは全身の力を剣に込め、振り下ろす。
鋭い衝撃と共に、防衛機構の柱が砕け、機械が大きく揺れる。リアの光がさらに強くなり、周囲の動力系統を一時的に麻痺させる。
「まだ油断するな!」アッシュが叫び、ミルダとリアも構えを崩さない。警報音は鳴り止まず、赤い光は一層鋭く点滅する。だが三人は呼吸を合わせ、連携の中で確実に防衛機構を切り崩していく。
光線が壁を砕き、機械の腕が振るわれるたび、三人は身を低くし、素早く動く。汗と緊張で全身が熱を帯びるが、諦めるわけにはいかない。
そしてついに、リアがクロックハートの力を最大限に放つ。眩い光が防衛機構を包み、建物全体が一瞬静まり返る。
「決まった……!」アッシュが息を弾ませながら叫ぶ。防衛機構は完全に麻痺し、建物の警報もピタリと止まった。
三人は深く息をつき、互いに見合う。建物の奥には、旧世界の遺産が静かに輝いている。長い戦いの果てに、ついに彼らはその眠る場所を手に入れたのだ。
警報が止まり、建物内に静寂が戻る。しかしその静けさは、緊張の糸が切れたわけではなかった。
「急ごう……まだ危険は残っている」アッシュは低く囁き、遺産をしっかりと抱える。
ミルダは周囲を警戒しながら、クロックハートを手に光を弱める。
「この建物、まだ何か仕掛けがありそう……」
リアは手早く遺産を確認し、頷く。
「わかったわ、急いでルミナスへ戻るわよ!」
三人は互いに目で合図を交わし、素早く建物の出口へと向かう。床のひび割れや残骸を避け、影のように動く足音だけが響く。
外に出ると、港に停めたルミナスが霧の中に静かに浮かんでいた。朝の光が波間に反射し、船体は青白く輝く。
「よし、乗り込め!」アッシュが叫ぶ。三人は遺産を抱えたまま、ルミナスへ駆け寄る。
船に乗り込むと、ミルダがエンジンを操作し、クロックハートの光が船体を包む。「ルミナス、出航準備完了!」
リアは深く息をつき、遺産を握り締める。
「ふぅ……危なかったわね」
アッシュは舵を握り、港を離れるルミナスを見つめる。
「まだ先は長い……でも、これで一歩前進だ」
霧に包まれた港を後に、ルミナスはゆっくりと上昇を始めた。三人の視線の先には、旧世界の遺産が眠る新たな冒険の道が広がっていた。
ルミナスが霧を切り裂き、港を後にした。三人は艦内で少し安堵の息をつく。
「やった……成功ね!」リアは笑顔で遺産を抱き締め、思わず小さくガッツポーズを作った。
「ふぅ……危なかったな」アッシュも肩の力を抜き、ミルダはクロックハートをそっと脇に置く。
しかし、その安堵はほんの一瞬で消えた。リアの体がガクンと揺れ、突然その場に倒れ込む。
「リアッ!」アッシュは咄嗟に駆け寄り、彼女を抱き起こす。顔色は真っ青で、呼吸も乱れている。
「……大丈夫、なの?」ミルダが駆け寄り、クロックハートをリアの体にかざす。光が淡く脈打つ。
リアの目がかすかに開き、かすれた声が漏れた。
「……頭が……」
アッシュは額に手を当て、冷や汗をぬぐいながら考える。遺産に触れたことで何か異変が……?
「どうしたんだ、一体……!」
恐怖と焦燥が胸を締めつける中、ルミナスは静かに空を滑る。三人の視線がリアに集中した。
果たして、この異変は一時的なものなのか、それとも――冒険の先に待つ、新たな試練の始まりなのか。
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