第五章 風に乗る言葉
最後の授業が終わった。
明日、美幸は後期試験のために出発する。
教室の空気は、いつもより少しだけ重かった。
別れの予感が、紘一の胸を静かに締めつける。
このまま、もう会えなくなってしまうのではないか——
そんな思いが、言葉となって口をついて出た。
「……LINE、交換しようか」
禁じられていることだった。
それでも、言わずにはいられなかった。
美幸は驚いたように目を見開き、そして微笑んだ。
「いいよ。私がやるね」
その笑顔に、紘一は少しだけ救われた気がした。
教室の空気が、ほんの少しだけ、柔らかくなった気がした。
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