月刊誌「新都会」昭和十二年(1937年)五月号掲載 読者投稿欄
今回、この雑誌が募集してゐた、私のエロ・グロ
私はかつて、京都のとある集合住宅の一室に住んでゐたのであるが、この話をするにあたつては
大家は四十六の壮年の男で、その妻には大層、歳の離れた二十二歳の妻が居た。
そんな妻はと
彼女は私に
「本ッ当に
そして彼女は、現代に於ひて女子の美德として扱われてゐるお淑やかさとはマッタク
彼女のその内奥には大きな大きな
その
そしてそんな彼女の大いなる
ある日、彼女は自分の夫が繁華街に遊びに行つている隙を見計らつて、私が住む一室にやつて來た事があつた。
彼女が來た事に
部屋に入つた彼女は私相手に色々と雑談を仕掛けてきた。
彼女の雑談と
しかも、その言葉の端々や話題性につひても不思議なほどに教養とでも
そんな中で私が
さうして私が一本手渡すと、彼女はいかにも
あまりにもエロチックであった……
目を眠さうに細めつつ、下目遣いで私の手を見てくる……そして、一回一回煙草を吸つて吐く毎に、横の方向にあつた窓の方を向きながら、流し目で私の方を見てくるのである。
私はそれをまう一度、二度、三度……何度でも見たいと、彼女が煙草を吸ひ終わつても、何本も何本も煙草を彼女に供給したのだつた。
すると、彼女は次に酒を
私は出來るだけその要求に応へようと、その時台所に置いてゐた一升瓶の日本酒を持つて來て、お猪口に注いで彼女に振舞つたのだつた。
振舞はれた酒を彼女はその紅い唇から零れて、顎をつたり、襟を濡らさうともグビグビと飲んでいき……つひには、全部飲みきつてしまつたのだつた。
彼女は、驚くべきことにそれでもケロッとして、酔つてゐなかつた。
そして、その次のこの女の行動が私の全てを永遠に
彼女は酔つてゐないにも
接吻の時に感じた彼女の唇の温もり……私は、腰の抜けるやうな思ひをしたのだつた。
それは、若い女人の情熱的な温もりで…かつ、男が感じ、または
彼女を見ると、ハラハラと髪から垂らしたおくれ毛を汗で濡らしつつ、微笑を私に向けてゐた。
思はず私も彼女の頬に接吻をした。
すると彼女もまた私の頬にほぼ同時に接吻をした。
互いの接吻はいつの間にか、口づけとなり……そしてさらに進み、互いの
自分の秘めたる
私と彼女との間での情交はこのやうにして始まつたのだつた。
彼女の素晴らしく艶やかな肉を常に求め
そんな中で、ある日、彼女はこのやうな事を私に言つてきた。
「夫を殺したい」
果たして彼女の方も私がいないとどうしやうも無い程の渇きを感じるやうだつた。
一刻も早く私と一緒になつて、この爛れた生活を何の
が、彼女も私も少なくとも直接殺しに行くまでの
そんなある日……
私がいつものやうに彼女と情交してゐると、彼女の夫が突然殴りこんできたのだつた。
彼女の夫は私をコテンパンに殴りつけた後、次に妻をこれ以上ない程に殴りつけたのだった。
結果的に私はその借り部屋を追い出される事となり……新しい借り部屋が見つかるまでの数日間の路上生活が私を歓迎することになるのだつた。
さうして彼女と会ふ事が無くなり、数ヵ月が
私は或る日の夜、京都の郊外を暇つぶしに散策してゐたのだが、その日、
その日の私は散策途中にある神社を
さうして振り返って見ると、暗がりの中に人が立ってゐるのが見えたのである。
よくよく見てみると、どうにもおかしい。
その人は白装束を着てゐるやうで、長い髪を垂らしてゐるのも見えて、女のやうではあるのだが、微動だにもせずずっとブツブツ何かを言つてゐるのである。
フッと、祠の方にも
見ると……祠の後ろに……女が立ってゐたのである。
唯の女では無かった……
その女は口から左頰にかけての皮膚と肉が裂けてゐて……かつ、その裂けた部分からは血がボトボトと垂れてゐるのである。
鬼だッと私は思つた……
さうして、私は一目散に逃げだしたのであつた……
その日の
野次馬が群がつてゐたその
何せ、その顏は……以前住んでゐた例の集合住宅の大家の顏であったから…
今現在、私は再び例のあの大家の妻……いや、”元妻”と暮らしてゐる……
彼女は
が、最近になつて
彼女が持つてきた衣服が入れられてゐる箪笥の中に……白装束を見つけたのである。
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