月刊誌「HIMMEL」 昭和五十五年(1980年)八月号掲載 特集「現代の呪術に迫る!」

 さて、今年も暑い時期になってきて、同時にオカルト業界も盛り上がる時期になってきたが……今回、本誌としては題名のように「現代の呪術」……というものに大きく焦点を当てて迫っていきたいと思う。

 そもそも呪術とは……


……(中略)……


 ……と、このような呪術のやり方が昨今のオカルト界隈においてメジャーとなっているのだが……一方で、マイナーながらも一部の集団や人間の中において熱狂的……もっと言えばカルト的人気を誇っているもの…や、それどころか秘術のようにして全く世の中に出てこないような呪術もある。


 ……(中略)……


 そして、今回、本誌はとある呪術に関して、取材の末に一つ資料を手に入れる事に成功したのである。

 その資料というのは、呪術の過程を写したビデオテープであるのだが……テープに写された映像には幾つもの奇異な点があり、非常に興味深い代物となっている。

 今回、このビデオテープを提供してくれた磯國忠彦(仮名)氏はオカルト研究家として一定の名声を得ているのだが、テープに関してはこのように述べている。


「いやあ、どうにもねえ。何というかな……ウーーム。何だか不思議な映像なんです……イヤァ、不思議といったら呪術全般にあてはまるかもしれませんが、今回このビデオに写っている奴はそういうのとは一線を画すような気がするんですよな…どこか……こう、禍々しさの中に別のものを混ぜこんだような……」


 さてさて、では、そのように言われているビデオテープの中身とはどのような物なのか……以下、その内容を文字に起こしていく。


 


 ……砂嵐の後、モニターにしめ縄が為された大木が写される。

 大木の背景が真っ暗なことから夜である事が推察される。また、画面の明るさから、非常に明るい光源で大木を照らしていることもまた推察される。


(大木が写された写真)


 画面はそのまま約一分間何も変化がない。


 ……約一分後……

 画面の右端から画面とは横の方向を向きながら人が出現する。

 その人物は全身白装束かつ、長い髪の毛を垂らしており、女性である事が推察される。


(横向きの白装束の人物の写真)


 白装束の人物は、大木の真横に来ると、そのまま直立不動の体勢で横を向きながらジッと何かを見つめている。

 三分間この状態が続く……


 ……約三分後……

 突然、白装束の人物がその体勢を維持したまま、金切声を上げる。

 金切声はそのまま五分ほど続く。

 白装束の人物が挙げる金切声は時折、日本語らしきものが入っていることからまったくの意味不明な言動ではなく、何かしらの呪文である可能性がある。

 しかし非常に早口かつ、音質が非常に悪い事からその内容は判別不能である。

 以下、わずかに聞き取れた部分である。


「……(意味不明箇所)……ああああーーーなんぞなんじのおんみをうばわんやああああああーーーなんぢにちっともちっともちっともちっともちっともおとらぬわがみでもってええええええええーーーーーーおんみおおおおおおおおーーーー……(意味不明箇所)……」



 ……約五分後……

 白装束の人物の金切声が止まる。

 白装束の人物は、深く頭を下げ、うな垂れる。

 そして、そこからボソボソと何かを話す声が聞こえる。

 しかし、こちらもまた非常に悪い音質から、その内容の判別は困難である。

 また、ボソボソとした声は二重に聞こえている。この事から、白装束の人物以外の誰かが、喋っているのではないかという可能性もある。


(うなだれる白装束の人物の写真)



 ……約三分後……

 白装束の人物が顔を上げる。

 そして画面の左方向に向かって歩み始める。

 木の端に到達したところで、突然、画面とは反対方向の木の裏側に回りこむ。

 暫くした後、カーンカーンと何かを打ち込む音が聞こえる。

 暫くして、その音もやむ。

 その後の一分間は、静寂が続く。


……約一分後……

 再びボソボソとした声が聞こえる。

 しかし、数分前の声とは違って、カメラのマイクに直接話し掛けているようである。その為か、ある程度内容の判別が可能であった。


以下はそのボソボソ声の文字起こしである。


「やまむ やまむ やまむ やまむ 」

「せうなごんけふいまよにあらず」

「そのてのえどをのぞかむ」

「ざいごう ざいごう ざいごう ざいごう」

「わろき いみじふこと」


 ……などである。

 この間、すすり泣きのような声も聞こえる。



……約二分後……

 画面上には、白装束の人物が現れてはいないが、再び金切声が響く。

 今回も数分前のように、音質の関係で、内容の判別が困難であった。


……約一分後……

 金切声が止む。

 木の幹からこちら(画面)を向いて顔が覗く。

 顔には何かしらの傷らしきものがある。


……約一分後……

 こちら(画面)に向かって、白装束の人物が走ってくる。

 白装束の人物はカメラを掴むと、画面にその目をグッと近づけた。

 白装束の人物の瞳と思しきものが映る。



 ……その直後、この映像は終了した。




 と、ビデオテープの中身としてはこのような内容の映像であった。

 磯國忠彦氏曰く、このビデオテープは彼の友人が某山地にて拾ったものを譲り受けたものであるらしく、その某山地は、昨今は呪術目的と思しき物品などが見つかる事が多々あると言う。

 そして、磯國忠彦氏が続けて言う事には、このビデオテープと同じような儀式を十年ほど前に一度、友人づてに聞いた事があるらしく、この事からもある種の呪術であることは間違いないという。

 しかし、友人づてに聞いたその呪術も、結局その起源だとか、目的だとか…そればかりかその名前さえもハッキリとはしない…まさにベールに覆われた呪術なのである。

 その友人もまた、その呪術については別のオカルト研究家から聞いたもので……その閉鎖性から界隈の者の間でも簡単に情報が手に入らないのだという。


……(以下略)……



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