第25話 神明叡一の演説

「偉大なるワールドの人民達よ! 今こそこの地球に生まれた事を感謝し、そしてAIと共に生きるこの素晴らしき世界に賛辞を贈るのです! 我々人類は、長い年月をかけて今のテクノロジーを生み出し、肉体的にきつい労働、汚れる労働、くだらない雑務をロボットに行わせる事で効率化を実現し、暮らしやすく生きやすいこの世の中を手に入れる事が出来ました。そんな中、頭の悪い出来損ないの人間、治安を乱すならず者、決定的な犯罪を犯す愚か者、いわゆるこの世の中に適応出来ないを食材にする事で、今となっては『贅沢』だと言われる『食事』をする機会を手に入れました。今でもテクノロジーを駆使して野菜や米を作ってくれている地方地下世界の農家の皆様には頭が下がる思いです。二十二世紀を迎えた頃、この地球の畜産産業は、深刻な温暖化と担い手不足により急速に衰退しました。また、罪の無い家畜を食料にする事への批判も徐々に高まってきておりました。そんな折、ワールド政府ガバメントが生み出した『人肉食推進法』は、この世に不要な人間を食材にするという、画期的な法律でした。罪無き動物達を保護するため、なおかつ効率よくたんぱく質を摂取する肉食という文化にマッチした最高の食材、それがなのです。このAI管理社会において、それに適応できない劣悪人種は徹底的に排除されるべき存在です。犯罪を犯す者や、治安を乱す者も同様です。この素晴らしきワールドを乱す存在など食ってしまえば良いのです。みなでこの素晴らしき世界を守りましょう! 昨今、ワールド政府に楯突くレジスタンスの存在が確認されています。彼らは美食家グルメを殺害し、行政をも敵に回し危害を与える事で悦に入っています。我々ワールド政府は彼らを容認しません。彼らを徹底排除する事で、この世界の秩序を守ります。それにつきましては、彼らを見かけたら是非お近くの行政にご連絡をお願いします。彼らは一般市民に紛れ込んで、狡猾に、悪計を巡らし生きております。彼らは、見た目には一般市民を装っていますが、凶悪な犯罪者です。それらレジスタンスは、世界各地に拠点を置き、それぞれのグループが密に連絡を取り合っているものと思われます。彼らは隠れるのが上手く、ワールド政府も未だに彼らの拠点を探し出せず、非常に対応に苦慮しております。先日、捕まえましたが、彼は強情に口を割らず、結果として食肉処理する事になりました。ワールドの秩序を乱す彼らを、是非とも食肉処理しましょう! そして市民の皆様に、安価に肉を渡す事を約束しましょう。サプリメントで栄養を摂っている庶民の皆様にも、この機会に肉の味を覚えて頂く事を願っております。要らぬ人間はどんどんと食肉処理をするのです! そして、でこの素晴らしき世界をより素晴らしいものにしていきましょう! この神明叡一、ワールド政府を代表して、この世界の安寧を、心よりお祈りいたします」

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