第2話・けがれた古き地のモノ
翌日から、ユズハは授業に出た。
緊張する中での授業が終わり──寄宿舎に向かう途中の石畳の道で、ユズハは一人の女子生徒に呼び止められた。
「生徒会長の緋扇 エンジュです……弓月 ユズハさん、どうでしたか? 初日の学園生活は?」
ユズハは、黒髪の彼女が部屋のベットに置き手紙をした人物か……と、軽く会釈した。
「お心遣いありがとうございます……まだ、わからないコトばかりで」
「何か困り事があったら、わたくしに相談してください」
その時──枝に止まっている複数のカラスが鳴く。
エンジュが、カラスを見て呟く声が聞こえた。
「カラスたちの封印力は、まだ少しは持ちそうですね……赤い月の夜くらいまでは」
呟きに不思議そうな顔をしているユズハに、エンジュが言った。
「一つだけ忠告しておきます……北側校舎裏にある、祠には近づかないように……それと、深夜二時過ぎの丑三つ刻には、寄宿舎から外に出ないように……いいですね」
◇◇◇◇◇◇
寄宿舎の学食での夕食も終わり、部屋に戻って予習をしているユズハに、二段ベットの上の段に寝転がったミズキが話しかけてきた。
「ユズハの一般庶民から、推薦選出されたんだ……オレも同じ、庶民の出だよ」
いろいろと、話していくうちに──ユズハとミズキは、互いの共通点を発見した。
「ユズハも、オレと同じ生まれ星と、珍しい血液型の人間か……あり得ない偶然だな……生まれ方位は向かい合わせの陰陽だけど、生まれた日時まで同じだなんて」
ミズキが、好奇心に満ちた目で言った。
「なぁ、今夜……北側校舎裏の祠に行ってみないか……丑三つ刻に」
「それは、生徒会長から禁止されていて」
「禁止や校則は破るためにある……お嬢さまや、王子さまだらけの上品な学園生活は退屈するだろう……庶民は刺激を求めないと」
「でも……」
結局、能動的なミズキの言葉にユズハは押し切られる形になって、ミズキの深夜の誘いを承諾した。
◆◆◆◆◆◆
月が雲に隠れた深夜二時の、丑三つの刻──寄宿舎の窓から外に出た、ミズキとユズハは夜の石畳の道をライトで照らしながら。
北側校舎の裏側へと向かった。
少し陰の気が漂う樹木が茂った、道を進むとライトの明かりの中に、苔に覆われた狛犬が浮かび上がる。
その不気味な姿に、ユズハが短い悲鳴を発する。
「ひっ、なにコレ?」
ミズキは、しめ縄で囲まれた小さな社を見つけてライトで照らす。
少しだけ開いている社の中には、石が一つ置いてあるだけだった。
「石以外に何もないな……別に危険なことあなんて……」
ミズキがそう呟いた時──強いライトの光りが二人を照らす。
「北側校舎には近づかないように、忠告したはずです」
振り返ると、そこに緋扇 エンジュが立っていた。
エンジュは威厳を含んだ、静かな口調で言った。
「今回だけは見なかったコトにします……早く寄宿舎に戻りなさい」
ミズキとユズハは、バツが悪そうな顔で、寮に戻っていった。
ミズキとユズハの姿が見えなくなったのを確認した、エンジュは祠の中に手を入れて石の裏を扉側に向ける。
石の裏側には、高熱で溶けたような奇妙な亀裂があった。
祠の扉を閉めて、エンジュが祠に向かって言った。
「計画は順調です……二体の
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