第16話 襖の隙間から

夜更け、布団に横になっても、眠りは訪れなかった。

襖の向こうから聞こえてくる音に、耳が釘づけになってしまったからだ。


布団のきしむ音。

母の、押し殺したような吐息。


「……んっ……あぁ……」

かすかな声なのに、はっきりと耳に届いてしまう。


思わず襖の隙間に目を寄せてしまった。

そこで見たのは──父に抱かれ、頬を紅潮させる母の姿だった。

眉を寄せ、苦しげに、それでいて甘く乱れる母。


あの母が……女の顔をしている。

目を逸らさなければいけないのに、逸らせなかった。

胸がざわつき、喉が渇く。

心臓が早鐘のように打ち、呼吸が苦しくなる。


布団に戻っても、耳の奥に母の声がこびりついて離れない。

熱が全身に広がり、シーツを握る手が震えた。

「どうして……」 

自分の身体がこんなふうに反応してしまうことに、戸惑いと羞恥が込み上げる。


──翔太。


浮かんできたのは、彼の顔。

高校時代からずっと心の奥に残っていた人。

再会したときに芽生えた胸の高鳴りが、今は身体の疼きへと変わっている。


母の声を聞いた瞬間、私の中でも何かが壊れてしまった。

母のように、女として求められたい。

そしてその願いは、どうしようもなく翔太へと向かってしまう。


布団の中で目を閉じながら、私ははっきりと悟った。

──私は翔太を欲している。

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