第15話 夫の帰宅、娘の視線

日曜の夕暮れ。


「ただいま」

玄関から響いた声に、私は一瞬耳を疑った。

単身赴任中の夫が、突然帰省してきたのだった。


「出張が早く片付いてな。少しだけど、顔を見たくて」

笑顔を見せる夫に、私は引きつった笑みを返すしかなかった。


食卓には久しぶりに家族三人が揃った。

夫の話に相槌を打ちながらも、胸の奥では翔太の顔がちらついて離れない。


──まさか、同じ家で娘の同級生と抱き合っていたとは。


その夜。

夫に肩を抱かれ、寝室の布団に押し倒された。


「……久しぶりだな」

抑えた声に、私は無理に笑みを作りながら頷いた。

身体を重ねると、すぐに気づいた。

翔太に抱かれて以来、夫の動きがどこか物足りない。

それでも、久しぶりの夫婦の営みを拒むわけにはいかない。


「……あっ、あぁ……」

思わず声が漏れる。

自分でも驚くほど、敏感に反応していた。

夫の指が触れるたび、翔太の熱を思い出してしまうのだった。


「……おい。今日は随分、感じ方が違うな」

夫が怪訝そうに囁いた。


「いつもはもっと淡々としてたのに……どうした?」

その言葉に、心臓が止まりそうになった。


「……だって、久しぶりだから」

必死に誤魔化すが、夫の視線が疑いを帯びていく。


そして──襖の隙間。

そこから覗く影に私は気づかなかった。

彩花は目を閉じたふりをしながら、母が女として悶える姿をこっそり見ていた。

聞き慣れない母の声。

それは、娘の知らなかった顔だった。

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