第2話

タスクは大阪駅に降り立った。

「うわ、人いっぱいだ…」


雑踏にのまれながら歩くと、行列の先に湯気が立ちのぼっている。豚まんの店だった。

「豚まんいかがですかー!」

「美味しいわ!」

「やっぱ東京と違うね」

カップルが笑顔で食べている。


タスクのお腹が鳴った。

「そこの兄ちゃん、腹減ってるやろ。食べてみ」

優しいおっちゃんが豚まんを差し出した。

「ありがとうございます!」

一口かじると、じゅわっと肉汁が広がる。

「うまっ…」


ふと視線を上げると、若い女性たちが広告の前で写真を撮っていた。

巨大なポスターには、人気アイドルのヒロトが微笑んでいる。

「ヒロトくん、かっこいい~!」

ファンはアクリルスタンドを掲げ、夢中でシャッターを切る。


タスクは立ち止まった。

(ヒロト…どこかで…あ!めぐみちゃんとドラマで共演してた奴だ!)

半年前の記憶がよみがえる。

テレビの中で、タスクの推し女優・夢見めぐみが、ヒロトとキスをしていたのだ。

(くそっ…あのシーン、まだ許せねぇ!)


すると人混みの中から、帽子とマスクをつけた男が現れた。

髪型と雰囲気ですぐにわかる。――ヒロト本人だ。


「ねぇ、ヒロトくんじゃない?」

「髪型でバレちゃうよね…」

ファンたちがざわつく。


タスクは思わず睨みつけた。

「おい、あんた…ヒロトだな」

ヒロトは足を止め、目だけで笑った。

「そういう君は誰?」

「俺はただのファンだ。でも――あの時のめぐみちゃんの涙、忘れてねぇ」


ヒロトの目が鋭くなった。

「面白い。勝負でもするか?」

「望むところだ!」


二人の視線が交錯する。

大阪の雑踏は、静かにざわめきを増していった――。


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