第5話 頼りにならないかもしれない竹中先生
「というわけでこれこそが愛だと思うんですけど、どうですかね。って、誰もいないじゃん。時間無駄にした・・・」
驚いたことに竹中先生はまだ惚気、もとい愛とは何かについて教えてくれていました。とはいえ、自分の世界に入り込みすぎて、三人がいなくなったことに気づいていなかったようです。ただでさえ残業が大変で時間がないのに、徒労に終わって肩を落としました。
「あのー、先生いますかー?」
そこに、いつの間にか啓介が来ていたので、先生は恥ずかしさと、腹立たしさと、生徒の前では優しい大人でありたいというこだわりから、なんとも微妙な表情をしました。
「・・・・なんですか?愛が見つかりましたか?」
「違うんです。ユッキー、じゃなくて雪之助と菊太郎が喧嘩しちゃったので、先に『あい』を見つけたら仲直りできるかなって思って、先生にも手伝ってほしいんです。」
「あー・・・えっと、このあと残業、じゃなくて、君たちの間での出来事だから、先生 が出ていっちゃうと、余計にややこしくなっちゃうんじゃないかな。」
「でも・・・」
「そうだ!なにか二人の好きなおやつでも持っていってあげたら良いんじゃないかな?」
自分にしてはいい提案だと、先生は心の中で自画自賛をしました。
「おやつ・・・ありがとう先生!おやつが『あい』って遠回しに教えてくれたんだね!」
「いや別にそういうわけでは・・・」
啓介は先生の訂正も聞かずに慌ただしく出て行ってしまいました。いつも常識人のように振る舞っている啓介ですが、類は友を呼ぶというもの。すっかり雪之助に染まって、ポジティブに斜め上に飛んでいくところがありました。先生は以前、「そういうところが雪之助と馬が合うんだろうな」と言いましたが、本人に信じてもらえませんでした。
「さてと、さっさと仕事しちゃうか。」
たまには暖かく見守るのも大人の仕事だよな。そう自分に言い聞かせて先生は愛しい人に早く会うため仕事をし始めました。
「あの愛について話したこと、学校で噂されないといいけど。」
一抹の不安を抱えながら。
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