第6話 金

ようやく傷の癒えた、ある日のこと。

魔王は、机の上に一冊のノートを広げた。


「これを見よ、我が家計簿だ」


「魔王が家計簿……?」


ページにはびっしりと出費の記録が並んでいた。


「……スライムの餌代、餌代、餌代……ほぼそればっかじゃねえか!」


「スラ吉の健康は我が軍の命運を左右するからな!」


リトは頭を抱えた。


「ていうか、毎月赤字じゃねえか……。世界征服より生活立て直すほうが先だろ」


「なにを言う! 世界征服は経済から始まるのじゃ!リアリストなのじゃ!」


魔王は自信満々に言ったが、

ページの隅には「来月のお米どうしよう」と震える筆跡で書かれている。


『どの口が言ってんだ……』と思いつつ、天を仰ぐリトであった。

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