第5話 剛腕

あくる日、リトと魔王とスラ吉は、村のパン屋の前に立っていた。


「ここを攻略する!」


「ただのパン屋だぞ……」


魔王が大仰に扉を開け放つ。中には屈強なパン職人。

腕は丸太のように太く、熱気で真っ赤になった顔に汗が光っている。


「いらっしゃい!」


「い、いざ尋常に勝負!」


魔王がスラ吉をけしかける。

しかし職人はオーブンから取り出したばかりのフランスパンを構え――。


ゴッ。

「ぐふっ!」


魔王は頭を直撃され、その場に崩れ落ちた。


スラ吉は、パン粉まみれにされたあげく、美味しく揚げられる寸前に命からがら脱出。

それでも、パン粉に水分を持っていかれ、瀕死の重傷だ。


リトは思った『パン屋を攻めただけで、これほどの大惨事になるとは……』


「"ハード系のパン屋"だったとは、迂闊であったわ……つ、次は……ケーキ屋を攻める……」


涙目で呟く魔王を見て、リトは目頭を押さえるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る