潰れた蛙
銀満ノ錦平
潰れた蛙
日照りが強く、蝉の鳴き声にツクツクボウシが目立ち始めた8月の下旬…僕は大きな何かに踏まれて潰れて死んだ。
本当にいきなりで僕は、踏まれたと思った頃にはもう死んでいた。
私が意思を認識した頃には、身体は潰れ、どくどくと血と体液が飛び散り、ほぼ地面と一体化したかのような感覚に陥っていた。
しかしそれでもまだ僕の意思は残っていた。
理由は分からない。
そもそも僕にこの様に自身の意思というものを考える事が出来るなんて思いもよらなかった。
僕達は、今大地をのうのうと自分だけの世界だと勘違いしている巨大生物みたいに意味のわからない行動で水庭を作り出したかと思えば変な草を植え始め、それを成長させ、生きる糧に必要な水を抜いたり入れたりして、居場所の環境を曖昧にされ、僕の兄弟の何匹かは運悪く水を抜かれた時に干からびて死んでいって僕は運良く別の住処にいたので助かったけど、水を失って彷徨い、気が付けば倒れ込んでそのまま動かなくなるのを実際に目にした時は本能がこんな死に方はいけない…と身体中が反応し、それ以降は水が抜かれようとすると身体が察知して次の環境に適した場所に誰よりも早く移動する事ができるようになってそれが自信となったのか他の同士達からも一目置かれる存在となっていて
鼻もないのに鼻高々とゲロゲロ…と鳴く声も他よりも透き通りが良く雌からのアプローチが頻繁になっていて、もう僕はこのまま華のある一生を得るんだと高を括り、調子付いてつい別の水辺に向かおうとあの暑い地上に出てしまったんだ。
…結果、そのまま通った何かに引かれて死んでしまった。
アホすぎた…調子に乗りすぎたんだ…。
そしてそのまま大地の豊かさが感じず、心無く硬い通路にそのまま潰れてしまったんだよね。
痛いなんて悲鳴もあげれない。
しかも身体が離れ、僕自身の身体を見れているのに僕はそこから離れる事ができない。
僕はそのまま…潰れたまま僕より大きい何かが作ったこの不自然な地上と、空から僕を照らしてる日光が今は僕を挟みかけて…死んでいても襲いかかって来て狂いそうになる。
だけどそこに意思や意味はない。
ただあるのは過ぎてゆく時間と拍車を掛けてくる熱気…。
死んでも晒され、道行く何かに怯えられ…それを見続けるしかできない。
僕は蛙…潰れた蛙。
潰れた蛙 銀満ノ錦平 @ginnmani
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