16話
会議から一ヶ月が経とうとし、桜様の学園へ帰る時期が近づいていた。
あれから私はというと静華様も夏休みに入り、海や水族館、姉妹が休暇を楽しめるよう護衛の日々を送り疲れ果てていた。
「あ〜〜〜っ」
現在私は、静華様にマッサージをしてもらっていた。
「大丈夫かい、暁仁?」
「大丈夫ですよ。組織の仕事に加え、陰陽庁からの霊災の緊急対応に、静華様と桜様が夏休みを満喫できるように近づいてきた男をなぎ倒す仕事なんていつものことです」
(主よ全然大丈夫には見えないが…)
「すまない。我々二人の護衛まで引き受けてもらって、ただでさえお前は忙しいというのに」
あれから桜様は私の朝の鍛錬に参加するようになり、お互いの仲は前より良好になった。
「お気になさらずに、本来こっちが優先すべき仕事ですから」
「仕方ない、今日も僕が沢山甘えさせてあげるね」
「静華様は私が寝ている時、毎日ベットに潜り込んでるじゃないですか」
「いいじゃないか。僕と君は婚約者なんだ今更気にすることじゃない」
「気にしてください。女性なんですから」
「じゃあ、今日は…」
コソッ「寝ている君に僕の噛み跡でもつけておこうかな」
「………」
「どうした。顔が赤いぞ」
ゴホン「お気になさらず」
「そういえば、暁仁はもうすぐ特級に認定されるんでしょう」
「私はもうすぐで学園に帰らなければならないからな、お前の晴れ舞台が見れなくて残念だよ」
「と言っても私は式典には参加しませんよ」
「何故だ?」
「人が多い場所は苦手だからですよ。それにどれだけ注目されるか…」
「君は相変わらず人見知りだね。そこが暁仁の可愛いところではあるんだけどね」
「テレビなどで素顔などは報道されないのか?」
「陰陽庁にはいつも通り年齢や実績など紹介だけでいいと伝えてあります。私が素顔を出したとして逆に陰陽庁の信憑性を疑われかねないですしね」
「そんな事はないだろう」
「だって見てください。今まで紹介されている特級陰陽師は顔のいい奴や威厳や風格を感じられるじゃないですか。私の顔なんて死んだような目をした微妙な顔の人間ですよ。式典にでたら隣を歩いてる別の陰陽師が特級に間違われますよ絶対に…」
「……」
「……」
(……)
「皆さん否定しないんですね…」
「まぁ、それは一旦置いといて姉さんが帰るまであと5日何をするかだね」
「たまには御二人で屋敷でゆっくり過ごされては?」
「そうだな、お前もその調子じゃあ護衛もまともにできないだろう。ゆっくり休むといい」
「じゃあ、何しようか姉さん」
そう二人は話し合いながら私の部屋から出ていった。
(主は何をするのだ?)
「とりあえず、寝ます」
(まぁ、それがよかろう)
午後15時を回った時に、突然誰かに起こされた
「暁仁起きて」
「んっ…静華様どうかされましたか?」
「姉さんが何処にも見当たらないんだ!」
「御二人で過ごされていたはずでは?」
「それが2時間前に女中に呼ばれたからそれっきり戻ってこなくて、探したんだけどいなくて」
「まず、落ち着きましょう。東凱殿は?」
「他の人達と一緒に姉さんを探しているよ」
「屋敷で雇用されている方々の情報を持っていませんか?」
「爺なら持っているとは思うけど…」
「では、東凱殿を呼んでいただいてもよろしいですか?」
「わかった」
私は東凱殿に頼み、雇用リストを見せてもらった。
「暁仁殿いかがですかな?」
「この女性はいつから?」
「三月かなえのことでしたら、桜様の側仕えになって6年経ちますが…それがいかがなさいましたか?」
「迂闊だった…完全に私のミスです」
「どういう事でございますか!」
「実は…」
私は現在起きている行方不明者の話を東凱殿に話した。
「何とそのようなことが!」
「しかし、かなえとその事件について何が関係あると言うのですかな?」
「実は、三月かなえは1週間前、東京の隅田川の上流で岩に括り付けられた状態で川底に沈んだ状態で見つかっております」
「!…そんな馬鹿な」
「遺体の腐敗具合から死後2ヶ月は経っていたとの事です。」
「しかし、桜様の状況を報告するため、かなえとは毎日のように連絡を取り合っております。何者かがなりすましていたとはとても思えませぬぞ」
「…言いにくいのですが、実はそれだけではないのです」
「何ですか!」
「遺体は顔の皮が剥ぎ取られていたとの事です」
「…そ、そんな、誰がそんな惨たらしい事を、かなえはまだ24歳の女性だと言うのに…そんな…何故」
「……」
部屋の襖が勢いよく開けられた。
「暁仁、今の話し本当なのかい?」
「静華様…」
「かなえさんは最近結婚したばかりなんだ…姉さんの事は心配で仕方ない。でも、この屋敷で働いてくれているのは僕達、一条家にとっては家族も同じ流石に許すことなんてできない」
この方は今怒ってはいるが、冷静さを保たれている。何て強い方なのだろう…
「家の顔に泥を塗られ、それだけでは飽き足りず家族に手を出した。暁仁!」
「なんでしょうか?」
「君にお願いしてもいいかな…正直僕は今泣きそうで我慢しているんだ」
「はい」
「姉さんを助けて…」
「任せろ」
私は用意した狐の仮面を被り刀を取りハクを呼んだ
「ハクお願いします」
(わかっておる)
私はハクに跨り、空を駆けた。
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滋賀県のとある山中の山小屋にて〜
「んっ…ここは?」
私が目を覚ますと、側仕えのかなえが目の前に立っていた。
「お目覚めですか桜様」
「かなえ…ここは一体何処だ。なぜ私は縄で腕を縛られているんだ」
「それはですね」ビリビリビリ
「こういう事だから」
「なっ!」
かなえの顔が剥がれ落ち、一人の西洋人が卑しい笑みを浮かべ私を見る。
「こんにちは、一条桜」
「お前は誰だ!」
「私はジェームズ・サリウムと申します。貴方をここに連れてきた張本人です」
「かなえは、かなえは何処だ」
「あぁ〜、彼女なら死にましたよ」
「はっ…?」
ガチャ「旦那話は終わりましたかい?」
小屋に10名程の男達が入ってきた。
「何だお前達は?」
「本当は貴方が持っている式神にようがあるんですがね。これは、ただの私の余興です」
「私は女性の歪んだ顔を観るのが堪らなく好きなのですよ。そこに落ちている女性も大変素晴らしかった。そちらに潜入するためとは言え、思わず顔の皮を剥ぎ取りしばらく飾りとして楽しんでしまったよ」
「貴様ッ…許さんぞ貴様ら!」
「貴方は、この方達を相手にした時、どんな顔を浮かべてくれるんでしょうね」
「あの時の女は最後まで旦那の名前呼んでよ」
「最初は抵抗してたよな」
「「私は一条家に仕える人間だ、決して思いどうりにはならない」だったか?」
「最後は廃人になってそのまま死んじまってよ」
「死ぬ直前確かこう言ってたな「さくらさま」ってな」
「最後は顔の皮を剥ぎ取ったあと、死体は隅田川に括り付けてそのまま沈めてな」
「この女で何人になる?」
「10からは数えてねえな」
「こんな上玉な女、久しぶりだしよ」
「ッ…!」
「安心しろよ外にも40人ほど控えてるからよ」
「それじゃあいただきますか」
一人の男が私の胸を鷲掴みにし、服を破り捨てた。後に続き二人が身体を舐め始める。
「やべ〜、マジで綺麗なカラダしてやがる」
「俺からいただくわ」
そんな時だった小屋に雷が直撃し屋根に穴が空いた、一瞬周りが見えなくなった瞬間、私は誰かに引っ張られいつのまにか小屋の外に出ていた。
「ハクもう少し安全に降りられなかったんですか」
(贅沢を言うでない主よ)
「これギリギリアウトですか?」
(アウトであろうな)
そこには狐の面を被った見知らぬ声の男が私を抱き上げた。
「大丈夫ですか?桜様」
「暁仁、お前なのか!」
声は違うが誰だかすぐに気付く事ができたと同時に、私の胸が熱くなるのを感じた。
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