15話

 「まず、皆本日はよく集まってくれた」


 そう話を切り出すのは、坊主頭の眉毛が特徴的なヨボヨボなお爺さん。三席の真ん中に座る三羽烏で最年長の岩倉具定様


「今回は、急を要するため皆に集まってもらった」


「それで、その要件とは?」


「最近、日本での行方不明者が急増している件についてだ」


 具定様の左隣に座るのは、長い白髪に明治時代に流行した髭を生やした老人 安倍春信


「政府の人間がまた国家予算に困り果てて一般人を売り捌いてるんじゃないんですか」


「人身売買何て昔からよくある話でしょう。何を今

更…私達が動こうにも全ては終わった後、それこそ戸籍のない人間が売られても私達は関与できない。どうしようもないわよ。ただでさえ多いんだから」


 そう、昔は孤児や行き場のない子供を売り捌くのはよくあることではあったが、それでは足りなくなったのか一般人を誘拐して売り捌き、誘拐される一部始終がカメラに映りその動画が拡散され問題となり人身売買は一般人にも知られるところとなった。

 ただ、人身売買は臓器を売り捌くだけという認識が一般的な認識だが実際それだけではない。


「もうすぐ八月になります。悪徳宗教やとある国なんかは生贄の補充をする時期になりますしね。」


「ハロウィンとクリスマスじゃったか。決まった日に生贄をしたがる奴らばかりだからのう。」


「実際、黒魔術のいい生贄になるでしょうしね」


「若い女性だったら孕み袋目的で誘拐する組織や宗教もいるからな。生まれてきた子供をどんな使い方をするかは分からんが…」


「今回はそれだけではない」


 右隣に座る長い白い髭を生やし、一人だけ丸眼鏡をはめた坊主頭の老人 藤原岳陽


「実はな、今回の行方不明者が数名程遺体となって見つかっており、その全員が式神の契約を何らかの方法を使い強制的に奪われておる。

調べた結果、殺した後に式神の契約に介入し奪ったことまでは分かったんじゃが」


「…そんな事が可能なのですか?」


「わからん。何せ儂らも初めての事じゃ」


「被害は?」


「現在、確認されているだけで今月だけで34人だ」


「多いですね…しかし、どうやって契約に介入したがわかりません」


「契約に無理やり介入したとしても、契約者の魂は無事ではないだろう」


 式神の契約は自身の魂が必ず介入し何かしらの代償が必要となる。その契約は魂に刻まれるため、死んだあとは式神が魂を利用まで契約は解けることはない。


「契約者の魂はその場合どうなんだ?」


「…魂そのものが消えるか、契約した式神に取り込まれているかのどちらかであろうのう」


「どちらにしろ最悪な状況ですね」


「あぁ、穢れた魂は浄化しない限り輪廻に戻りはしないだろう」


「もしくは、魂が消えるということは魂そのものがなくなるという事…」


「ようするに」


「魂の死その存在そのものがなくなるということ」


「被害者の式神は1級〜2級の高位な魍魎ばかり」


「そのうち、十二天将も狙うやもしれん」


「敵の人数は?」


「分からんが、状況から見るに集団での犯行としかわかっていない」


「暁仁や」


私にそう話しかけてきたのは藤原岳陽様だった。


「なんでしょうか?」


「一条の令嬢の護衛についておるそうだな」


「はい、ですが私の護衛対象に十二天将と契約している様子はありませんが」


「違う、そっちではない」


「…姉の方じゃ」


「…なるほど」


「充分用心しろ、さもなければお前とて危うい」


「かしこまりました」


「藤助は、暁仁のサポートに回れあとの人間は調査後わかり次第残りの構成員を率いて、敵の拠点を潰す」


「生死は?」


「一人だけ捕まえて、あとは殺せ」


「「承知しました」」


「各自報告することは」


「私から一ついいかしら」


「角川紀美子申してみよ」


「諜報部員からの情報で最近、呪術師の違法組織が日本に入国しているとの情報がまわってきたわ」


「それってもしかして呪鬼のことですか?」


「えぇ、そうよ」


「確か…1級犯罪者橘孝介が加入してた組織だったよな」


「面倒事の予感しかしないのは儂だけかのう」


「何にしろ対応は変わらない。我々は国の秩序を保つだけ」


「筆頭が言うと違うね」


「話は以上か?」


「これにて会議を終了する。皆計画通りに事を運ぶこと、武運を祈る」



 組織の会議が終了し、私達は各々がやるべき事の準備をすべく解散した。


私が出口に向かう途中でハクが話しかけてきた。


(主あの三羽烏という老人達は本当に人間か?)


「あの御三方はそれぞれが長生きだと聞き及んでいます」


(…そうか、それにしても厄介な事になったのう。伝えるのか?)


「いいえ、様子見といったとこでしょう。私はいつも通り準備をするだけです」


(我もそろそろ戦いたいんだが…)


「必要になれば呼びます」


私は帰りの車に乗り一条の屋敷に戻るのであった



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る