14話

 私は現在、会議に参加するため烏の本拠地に来ていた。


「ハク起きていますか?」


(主よここは空気がヒリヒリしよる)


「ちょうどいい機会です。今日は組織の幹部が10名揃う日です。見ておくといいですよ」


私は鳥居ぐらいの大きさの門の前に立った。


「私は吉備暁仁だ。この門を開けられよ!」


 大門が開き、一人の50代半ばの女性が巫女服を着て、私を出迎えた。


「暁仁殿、お待ちしておりました。皆様が中でお待ちです」


「分かりました」


 門の向こうには全てが赤を象徴したような綺麗な神社が建てられており、私はその地下に案内された。

 

 地下にはまた別の空間が広がっておりそこには巨大いな丸い机と等間隔に並べられた椅子が置かれていた。


(うむ、全員強いな)


「当たり前ですよ。うちの最高戦力なんですから」


十羽 吉備暁仁


九羽 藤原景子


八羽 北辺勝太


七羽 白井善司


六羽 角川紀美子


五羽 宮倉栄子


四羽 吉備藤助


三羽 禅堂鏡花


二羽 河村景蔵


一羽 佐々木昌仁


「まぁ、こんな感じです」


(主が十番目か…)


「まぁ、私の場合組織に入って3年の新米ですから、何より強い人達ばかりなので自分自身がこの立ち位置に納得しているんです」


「おい!」


 そう私に声を掛けたのは、派手な服装にサングラスをかけ、髪は灰色、いかにも不良っぽい青年


「まだ幹部になりたてだっていうのにこの中で一番最後に来るとは、いいご身分だなおい!」


「すみません。服装には気をつけようと服選びに時間がかかってしまったんですよ。どっかの誰かさんみたいに品位のかけらもない服装でこの場に来るわけにはいきませんからね。そうは思いませんか?

勝太さん」


「喧嘩売ってんのかテメェ」


「まぁまぁ、落ち着かんかい。お前達」


 そう私達二人を止めに入った。タキシードを着こなしハット帽を被った老人


「すみません。善司殿」


「チッ…」


「まだまだ子供だのう。そうは思わんか、紀美子さん」


話を振られた青色の着物を着たここの最年長


「まぁ、実際にこの二人はまだまだ若いからの、それに比べて藤原のお嬢ちゃんは落ち着いてるわい」


私と勝太の間に座る。完全に寝巻き姿の少女


「zzzz〜」


「紀美子さん藤原の奴は落ち着いてるんじゃなくて寝ているのよ」


「そうかの〜、それにしても栄子ちゃんはまた綺麗になったね。いつの間にかそんな綺麗なドレス着るようになって」


「やだ〜もう、紀美子さんったら褒めるのが上手なんだから」


赤いドレスを着た40代前半の女性


「ばっちゃん、こいつはただ歳を重ねただけで綺麗になったわけじゃない。誤魔化してるだけだ」


「藤助さん今なんて?」


ご存知私の師匠、吉備藤助


「皆さん!お静かにそろそろお見えになります」


「まぁそんな硬いこと言わずに好きにやらせてあげればいいじゃんか鏡花ちゃん」


「2番手の貴方がそんな調子だから皆が纏まらないのですよ」


 眼鏡を掛け、軍服のような服装をした20代後半の女性


「そんなんじゃあ、貰い手がいなくなっちゃうよ叔父さん心配だな」


「余計なお世話です」


 軽いノリで話しかけ、髪を一束に結び、ダラッとした服装の30代後半の男性


「そう思わない。昌」


「……知らん」


「相変わらずそっけないんだから」


「………」


 張り詰めた空気を醸し出す。体格に似合わない紫色の着物を着た。刃のように鋭い目をした30代後半の男性


(主、確か幹部は10人と言っていたな)


「はい、そうですよ」


(主と筆頭との間に2席分空いてるのはなぜだ)


「元々うちは12人だったんですがね。150年前の霊災で当時の烏12人中8人が殉職したんです。変わりを見つけるのにこの150年間で6人増え10席分はどうにか埋まりましたがあと2席埋まるほどの強者がまだ現れていないんです」


(強さの基準とはなんなのだ)


「今、表側で存在する特級陰陽師で特級の化け物どもを単身で倒せるのは18人中私と師匠を抜いて6名程しかいないんですよ。あと10名はコンビを組んだり、芸能活動などをして知名度が広まった人間、実力的には1級ですが陰陽庁の広告部が一般人へのアプローチとして特級にした人間なんかもいますからね」


(…そんな事で大丈夫なのか?)


「…まぁ、ここにいる人達は特級に肉弾戦を挑んでも平気な人達ばかりですから、ここに居る全員が1級霊災と規模によりますが特級霊災を単身で制圧できるほどの強者ばかりです」


(主は何故、氣を制限している。その力があれば特級の魑魅魍魎共も中位くらいなら何体いようが払えるものを)


「私の全解放は、今は2時間はコントロールできますがデメリットもあるんですよ」


(デメリット?)


「全解放を長く使えば使うほど眠りについてしまうのです」


(それの何が原因なのだ)


「…寝ている間は老化と成長が止まるんです」


(!…どういう事だ、本来氣は人体にそういった影響を及ぼすことはないはずだ)


「わかりません。ただ、氣の全解放をしたあと5日間眠っていたことがありましてその際、食事をとっていないはずなのに空腹や身体の筋肉が衰えていないことに気付き調べた結果、私の身体がいつの間にかそうなっていました」


(2時間は耐えられると?)


「2時間の戦闘だったら眠ることもなければ日常的に問題はありません」


(だから、主は氣を制限しているのか…)


「おい!テメェさっきから無視してんじゃねぇぞ」


「勝太は少し落ち着きというものを身に着けてはいかがでしょうか?」


「…あとで、訓練場に来い。叩き潰してやる」


「お前達いい加減に静かにしろ!」


 周りが好き放題している中、老婆の声が会議場に響いた。


「三羽烏様ご到着〜」


 そうすると、さっきまでの騒が嘘だったかのように静まり返り、全員がその場を立ち上がる。


 大円の机には三カ所だけ絶対に近づいてはいけない席があり、私達の席とは間隔がだいぶ離れている。そこに3人の老人が座る。


「くるしゅうない。皆座るがよい」


「これより会議を始める」


 この日本を牛耳る裏の人間が姿を現し、笑みを浮かべた。


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