8話
「ん?バカ弟子、氣の全解放を使ったな…相手は清姫か?」
吉備家屋敷にて現当主吉備藤助は自室にて本を読んでいた。
「150年前の特級霊災で取り逃がした怪物の内の一体、あれから随分と経ってるからな…実力は怪物の中で特級下位と言ったとこか」
「護衛を担当してまだ、3日しか経ってないっていうのにいきなり大暴れしやがって」
「予想では、半年かかると思ったんだがな」
一条家の次女が呪いにかかっているのは知ってはいた。冬坊が襲撃といって嘘をついていることもわかってはいた。娘に暁仁を護衛に付けさせる事がせめてもの親の一つの願いだったんだろう。俺達なら呪いの元凶をどうにかしてくれると…
「しかし、予定より早く特級の推薦を出すことになりそうだな」
特級になるためには大きな功績がいる。それこそ特級の化物を倒したって事は確実にあいつは史上最年少の特級陰陽師だ。
「ふ〜っ…」
コンコン「失礼いたします」
「おう、入れ」
襖を開け入ってきたのは、一人の老婆吉備家女中、織田清子
「どうした?」
「お尋ねしたいことがございます。藤助様は暁仁様をどうお思いですか?14歳の子に無理をさせすぎでは?」
「…清さん、俺はあの愛弟子を本当の息子のように思ってる。だから俺が生きている内に何かしてやりたいんだ」
「例え、任務で亡くなるような事があってもですか?」
「父親は子供に綺麗な転び方を教え続けるのはいけないと俺は思うんだ。転んだ後にどう立ち上がるのか俺はアイツに教えてあげたいと思っている」
「そうですか…その愛情を暁仁様に教えて上げればいいものを不器用な方ですね」
「まぁ、そこは弟子も俺に似たのかね」
「その愛弟子が先ほど病院に運ばれたと連絡がありましたよ」
「何!すぐに行く」
「は〜ッ」
一条家屋敷にて〜
「爺!」
「んっ…姫様こんな早朝にどうされましたか?」
「ぼ、僕の呪い解けたんだ」
「!…なんですと一体何が?」
「暁仁が清姫を…あの化物を倒しに行って」
「呪いが解けたという事は暁仁殿が倒されたという事…姫様、経緯はあとでお聞きしますぞ」
「それは車の中で話すから早く暁仁の所に行かないと」
「かしこまりました」
山幸橋にて〜
「山を下りたはいいがこの状態で屋敷まで戻るのは流石に無理ですかね」
これは、臓器の損傷、肋骨数本、あと背骨もやってるかな…病院の再生医療で治せるだろうけど、血を抑えるのにていいっぱいですからね。誰か迎えが来てくれるとありがたいんですけど…
「ん?黒い車」
ガチヤ「暁仁!」
「静華様どうしてここに?」
「僕がいたらいけないの?」
「そんな事はありませんが、こんな早朝に迎えに来てくれるとは思わずにいたものでして…ありがとうございます」
「血だらけじゃないか、爺救急車の手配を」
「かしこまりました」
「静華様」
「何だい?」
「とりあえず眠りにつくので後のことは頼みました」
「えっ…ちょっと」
そして、私は意識を手放した。
長い夢を見ていた。孤児院で皆と過ごした楽しい夢、もうけして叶うことがない失われた光景を私は見ていた。
秀一が近づいて私の隣に並ぶ
「元気か?」
「あぁ、元気だ。見ていたぞ色々あったみたいだな最後まで迷惑をかけてしまったみたいですまない。」
「いいや、あれは俺が決めた道だから後悔はないよ。皆を守る為に全て捨てただけだしよ」
「そうか…あの少女はどうするんだ?」
「静華様のことか?ん〜、時に身を任せる」
「フッ…馬鹿なお前らしい」
「敵は強かったか?」
「無茶苦茶強かった。自信満々に挑んだけど手酷くやられながら何とか勝ったよ」
「そうか」
「もう行け、お前を待っている人のもとに、正直お前が此処にいても邪魔だ」
「相変わらずだな…また会えるか?」
「俺は待つだけだ。暇つぶしにお前の物語を見ているとしよう」
「そっか…またな秀一」
「あぁ、暁仁」
そして、夢は少しずつ光となって消えていく。
「んっ…ここは、病院か?」
「起きたか?」
「師匠早い再会ですね」
「生意気な口が聞けるということは大丈夫そうだな…一応、清姫との戦いで負った傷は再生治療で治してあるが、1週間は一条の屋敷で大人しくしていろよ」
「あれから何日経ってますか?」
「お前さんは4日間ベットに寝ていたな、疲労が一気にきたんだろう」
「そうですか…んっ?」
「どうした?」
「身体が重いのも治療のせいですか?」
「は〜ッ、布団をめくってみろ」
私は布団をめくったそこには私の身体の上で眠っている静華様だった。
「…幻ですか?」
「いいや、現実だ」
「…正直こんな美人が私の身体の上で寝るなんてありえます。しかも、今は夏ですよ」
「実際に寝ているだろ。事の顛末は静華お嬢ちゃんから聞いてるよ。中々恥ずかしい事口にしていたらしいな(笑)」
あの時、静華様に言ったことを思い出した。
「あ〜っ、恥ずがっし、何そんな事言ってんの、無茶苦茶恥ずかしいんですけど、私のバカ、アホ、間抜け」
私は両手で顔を隠しながら恥ずかしがった。
「いいんじゃねえか、お前さんらしくて」
「この光景を冬馬様になんて言えば」
「冬坊ならさっき来たぞ」
「えっ…」
「娘と今更何て話せばいいかわからず逃げていったな」
「そっ、そうですか…」
「こうも言ってたぞ「娘を君にあげた覚えはないんだけどな…ぜひ二人きりで今後について一緒に話し合いたい」とさ」
「絶対殺されるやつじゃないですか!」
「まぁ、とにかくだ清姫を倒した事で、お前さんの特級昇格は早まるだろう」
「清姫は特級に近い1級じゃないんですか?」
「いや、あれは下位クラスとはいえ特級だ」
「道理でボコボコにされるわけですよ」
「多分、2ヶ月に新たに昇格した人間が紹介されるだろうが、お前さんはどうする?」
「顔出し無しでお願いします。正直恥ずかしいですから」
「わかったよ。でも、いつかはバレると思うからその時は腹くくれよ」
「わかりました」
「じゃあ、俺はこれで帰るわ」
「また、屋敷にお願いをしたいことがあるので顔を出させていただきます」
「わかった。じゃあな」
ガラカラカラ「何だ、その…お前さんが無事でよかったよ」ガチャン
「………えっ?」
何、普通に嬉しいんですけど、師匠にしては珍しい
「全く、心配なら心配って言って下さいよ」
「親子揃って素直じゃないよね」
「そうですね…いつから聞いてましたか静華様?」
「うーん、あれから何日経ってますかってところからかな」
「ほぼ全部じゃないですか」
「暁仁、僕と話す時は自分を作っているんだね。藤助さんと話している時はいきいきとしてるのに…嫉妬しちゃうな…」
「いや、そのですね…私にも立場がありますので…」
「その話し方禁止ね」
「…わかりましたよ」
「うん!そっちの喋り方のほうが好きだよ」
何だこの人、美しいんですけど笑った顔といい本当にどうすればいいんだよこの状況…
「あのさ」
「どうしました?」
「助けてくれてありがとう」
「気にしなくていいですよ。私が好きでやったことなので」
「僕ね、君の過去を覗き見たんだ」
「!…それは私の過去を知ったて事ですか?」
「うん、嫌だった?」
「知ってしまったのなら仕方ないですよ。そのかわり内緒ですよ」
「わかったよ。2人だけの内緒だね」
「それにしても、あの乱暴な言い方は昔の暁仁の話し方だったんだね」
「……………そうですよ」
「恥ずかしがってるの?可愛いね」
「それやめたほうがいいですよ。勘違いしたらどうするんですか」
「いいよ」
「ん?…」
「勘違いしてもいいよ。僕、君の事好きになっちゃったから」
隙?すき?透き?好き?
「……ん?」
「だからこうゆう事」
そのまま、静華様は私に口付けした。
(ん?口の中に舌が入ってきた?)
チュパ「わかった?」
「ん?」
「これで君は僕の物」
妖艶に笑った。私はただ現状に困惑し続けるのであった。
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