9話

 病院から数日で退院し、師匠から言われた通り1週間一条の屋敷にて休養をとっていた。

 困った事と言えば…


「…………」


「z…z…z…」


 休めているのはいいんだけど…ここのところずっと静華様が私が寝ている間に部屋に侵入し、布団に潜り込んでくる。


「は〜〜ッ、どうしたものか…最近、静華様学校にも行っていないみたいですし成績は大丈夫みたいですがやはり依頼を受けている人間からしたら不安ではありますね…」


 静華様が通われている学校に男の私が入ることはできないため、一緒に暮らしてる存在という認識のほうが正しいのだろう。


「静華様、起きてください」


「んっ…おはよう暁仁」


寝起の顔をみただけなのにドキドキするんですけど


「私は、本日一度吉備家の屋敷に戻る予定なので、屋敷を2日ばかり空けます」


「なんで?」


「先の戦闘で私には式神が必要だとわかったので師匠に頼みに行こうと思いまして」


「…ん〜…じゃあ、僕も行く」


「学校はどうするんですか!」


「休む」


「駄目ですよ!」


「暁仁がいないなんて僕は嫌だよ、それに一緒にいてくれるって言ってたよね?」


「ッ…は〜ぁ、わかりました」


「うん」


 私は東凱殿に許可をとり、吉備家の屋敷に一時帰宅した。東凱殿から冬馬様に伝えて下さるとの事、東凱殿いわく


「もし、暁仁殿が自らお願いしに行けば当主様は暁仁殿を殺しかねません」


との事、あの方ならやりかねない。


「着きました。こちらです」


「へ〜、ここが吉備家の屋敷なんだね」


ガラガラガラ「只今、戻りました」


「暁仁様、お帰りなさいませ。」


「お邪魔します」


「静華様お話は、当主様からお聞きしております。吉備家女中、織田清子と申します。暁仁様を今後ともよろしくお願い致します」


「僕こそ、暁仁には助けられているからね。安心してよ、暁仁は僕が幸せにするから」


「えっ…」


「あらあら、暁仁様いい方をお迎えなさいましたね」


「清子さん、今は仕事相手ですよ」


「今は?」


「い、嫌だから、その…」


「ん〜ッ、僕の物になるまであともう少しってところかな?」


「……清子さん父の所に案内して下さい」


「ウフフフッ、かしこまりました。座敷にてお待ちです」


 私達二人は清子さんの案内で座敷へと向かった。


「藤助様、御二人をお連れいたしました」


「おぅ、入れ」


私達は師匠の正面に座り挨拶をした。


「よう、静華嬢ちゃん元気か?」


「はい、おかげさまで元気にしてます」


「師匠今日は頼みがあってきたんです」


「式神か?」


「はい」


「それならいい場所ある」


「それは?」


「シャンバラだ」


「!…師匠それは…」


「静華嬢ちゃんはうちの弟子の過去を見たんなら当然知ってるだろう?」


「暁仁の記憶の中に出てきた地下都市のことかな?」


「そうだ」


「でも、師匠シャンバラに行くとしたら闇街を通っていくつもりですか?」 


「いや、流石に嬢ちゃんを連れて闇街に行ったら間違いなく人身売買の商人に捕まる」


「ならどうやって?」


「まぁ、ついて来ればわかる」



屋敷から40分程離れたとある山


私達三人はシャンバラに行く為、山奥まできていた。


「こんな所に入り口があるんですか?」


「もうすぐ見えてくる」


「静華様、大丈夫ですか」


「うん、ありがとう大丈夫だよ」


「ここだ」


師匠が案内したのは古い祠だった。


「ここを押すと」ガラガラガラ 


祠が移動し地下につながる階段が現れた。


「すごい、僕こんなの初めて見たよ」


「まぁ、こっちの世界じゃあよく見る光景ですよ。何ならベタな仕掛けですね」


「行くぞ」


 私達は階段を降りていく、その先にはスキー場に置いてあるようなリフトが並べられていた。


「……師匠これしかないんですか?前はロープウェイでしたよね」


「場所によって違うんだよ」


「暁仁、もしかして怖いの?」


「な、何を言っているんですか?全然怖くないですよ…」


「じゃあ一人で乗る?」


「…静華様、一緒に乗っていただけないでしょうか?」


「フフッ、いいよ」


「先に俺が行く、後に若い二人で仲良く来い」


 私は静華様と一緒にリフトに乗り上にあるバーを膝まで下ろしリフトを起動した。


 「暁仁」


「どうしました?」


「地下都市シャンバラについて僕に教えてくれないかな?」


「…私も初めて知ったのは、国の管理している蔵書庫を訪れた時でした。」


「国の蔵書庫?」


「私は幼少期から歴史が好きだったんですが、ある日違和感に気づいたんです」


「違和感?」


「まるで誰かに誘導されているような感覚を感じたんです。その感覚に吐気さえ覚えました」


「師匠に蔵書庫に何度か連れて行って貰い沢山の歴史書を読みました」


「その本は読み切ったの?」


「あの量の本は何千人いようと一生読みきれませんよ」


「そんなにあったのかい!」


「えぇ、最初は驚かされました。師匠は最初に見つけた本に書いてある場所に連れて行ってくれることを約束してくれたので凄く悩んだ事を今でも覚えています」


「私は、神話に書いてある事には続きがあるのではないかと思い。ノアの箱舟についての記述を探したんです」


「あの、ノアの箱舟には私が考えた通り続きがありました。それがシャンバラが人類最初に発見した出来事でもありました」


「シャンバラはノアが最初に見つけたと?」


「私が読んだ本はそんな感じでしたね。ただ、ノアがシャンバラを訪れた時には建築物がすでにあったそうですよ」


「なんで式神を見つけるのにシャンバラへ行くの?」


「シャンバラは未知が多いそうで人間は自分達にとって危険な生き物をそこに閉じ込めたんです。だから伝説上の生き物も沢山存在するそうですよ」


「シャンバラはいつ作られたんだい?」


「わからないんです。地球が誕生する前かそれとも同時なのか…それぐらい古くからあるんですよ」


「日本でも平安時代に朝廷から指示され、ある一人の日本人が探索を行った記録もあるんです」


「その人は?」


「姿を消したそうですよ。恐らく消されたのでしょうね」


「……」


「静華様、それが裏なんですよ」


「あとどれくらいで着くの?」


「多分1時間半ですかね…」


「暁仁、もっと寄っていい?」


「どうぞ」


 静華様は私に寄りかかり身体を肩に乗せ、目を閉じた。私は人の温かさを改めて感じ取った。リフトは段々下っていく先が見えない程暗く、まるでここが闇の一部だといわんばかりに…















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