4話

 あれから3日が立ち、役所の手続きに時間がかかった為、現在私は一条家の屋敷に用意された部屋で荷解きをしていた。


「よりによって護衛対象の家に住み込みなんて聞いてないんですけど…ハ〜ッ」


 私は荷解きが終わり廊下に出た時姫様が引き戸の前に立っていた。


「何時までそこにいるんですか?」


「君はそういう喋り方するんだね」


「不快ですか?」


「いいや、僕はそっちの喋り方のほうが好きだな」


「それは何よりです」


「君は本当に同い年かい?」


「身長はそう変わりないと思いますが」


「いいや、雰囲気が大人っぽいというか、苦労人の顔をしているからさ」


「そんなに分かりやすいですか?」


「うん、お父様もよくそんな顔をしてるから」


 冬馬様、娘の件といい苦労してるんだろうな、冬馬様は中々ハンサムだが、奥さまの方はどんな方なんだろうか。次女がこのレベルだろ…姉はいったいどんなレベルだよ。顔面偏差値高いな…私なんて組織の人間にニートにいそうな顔とかよくからかわれるレベルだぞ。なんで私の周りには顔のいいやつが集まるんだか…不公平だ。


「食事の時間だから一緒に来てよ」


「了解しました。姫様」


 私達は食事をしに座敷に向かった。


「ねぇ、聞いてもいいかな?」


「どうされました?」


「なんであの時、僕を引き止めてくれたんだい?」


「あの時って喫茶店の時ですか?」


「うん」


「ん〜、姫様が少し困っていたからですかね」


「なんでそう思ったんだい?」


「一条が名門とは知っていますが色々と背負わされて、それがご自身の重荷になり、辛いことは辛いと言えない。そんな姫様の護衛とはいえその期間だけは貴方の味方であろうとそう思ったからですかね。それに…」


「それに?」


「護衛対象のお願いを聞くのも護衛の仕事ですから」


「(ジー……)」


 そんなに綺麗な顔で見られたらドキドキしちゃうでしょ全く…


「どうされました?姫様」


「…姫様じゃなくて、静華でいいよ」


「?…わかりました。静華様」


「うん」


 静華様は綺麗な笑顔でこちらを見た。


「ここだよ」


 私達は座敷に入った。そこに用意されていたのは一人分の食事、そこに静華様は座った。


「いただきます」


「…静華様」


「何?」


「いつも、1人で食事を食べられているのですか?」


「うん、そうだよ。お母様とお父様は仕事で忙しいくてね先に食べてるんだ。」


「御兄弟は?」


「僕は2人姉妹何だけどね。姉さんは陰陽師の高校の寮に泊まっているかな…いつも1人で食事をとるか、女中さんが見ているなか食事をしてるかな」


「…寂しくはないのですか?」


「何が?」


 あぁー、この方はわがままがいえないないんだ。吉備家は師匠と食事をとる事が多かったけど、他は違うのかね…よしっ


「すみませーん」


 そう呼ぶと女中の方が1人見えた。


「はい、なんでしょうか?」


「私の食事も持ってきていただいてもよろしいでしょうか?」


「!…それは困ります」


「お願いします」


「……わかりました」


 そういって女中さんが渋々ながらにも食事を持ってきてくれた。


「いただきます」


「……なんで?」


「どうされました静華様?」


「一緒に食事をとるなんて、僕は頼んでいないけど…」


「知っていますか」


「何が?」


「食事は、誰かと一緒に食べるからおいしいんですよ」


「………ふ~ん」


「それで聞きたい事がとかないですか?」


「食事中に行儀が悪いよ」


「いいから、いいから」


「そういえば、同い年で1級って聞いたけどすごいね。いつなったんだい?」


「2年前に1級の資格を習得しましたよ。歴代最年少だとか」


「新聞には君の事は出てきてないけど?」


「あぁ〜、私が断っているんですよ」


「なんで?」


「私なんかが映っても仕方がないですし、余りカメラに映りたくないんですよ。それに自慢することでもないですしね」


「どうしてなんだい?君の歳で1級になるだけの活躍をしたなら自慢してもいいことなのに…」


「私にとっては助けたいから助けただけでそれを誇らしく思っていませんので」


「…そうなんだ」


「静華様は家族とは仲がいいんですか?」


「仲はいいよ。最近は碌な会話ができていないけどね…」


 静華様は思い詰めた顔をして私に話した。もしかして静華様が狙われている理由は別にあるんじゃ…


「姉さんは今も長期休みにはこっちに帰ってきてくれるんだ」


今も帰ってきてくれる?


「そうですか、それじゃあもうすぐ帰って来られるのですね」


「うん」


 今は6月、一ヶ月たったら姉の方は帰ってくる。母親と父親はどうなんだ?父親は見たが…そういえば昨日当主にお会いしてから、あれから一度も見ていない。何故?


「あれ?」


「どうされました?」


「いつの間にか食べ終わっていたよ」


「それはよかった」


 食事を終えたあと、静華様は東凱殿と勉学に励まれ時刻は22時を回っていた。


「姫様そろそろ眠るお時間ですぞ」


「あっ、本当だ」


「暁仁殿、今日の護衛ありがとう御座いました」


「静華様は勉強するときも着物ままなのですね」


「えぇ…姫様がそうしたいと申されているので」


「東凱殿、私に隠し事はありませんか?」


ギクッ「そんな事はありません。もう寝る時間でございます。暁仁殿もご自身のお部屋に行かれてはいかがでしょうか」


「いえ、静華様が眠ったあとも護衛いたしますよ。私は4時間眠れれば十分ですから」


「……そうですか。では、私はこれで」


「えぇ、お疲れ様でした。東凱殿」


 東凱殿はそのまま自分の部屋へと戻られた。後悔して知らんぞ、そう聞こえたような気がしたがきのせいかな。


「どうして君が残るんだい?」


「眠りにつくまで私が襖の前で待機しております」


「いなくていいから戻ってくれないか!」


「どうされたのですか?急に声を荒らげて…」


「いいから」


「わかりました」


 そうは言ったが私は戻るふりをして、襖の前に座り込んだ。


「現在は深夜1時か…特に異常はないが」


「うぅ…」


 苦しんでいるような声が襖の向こうから聞こえてきた。


バンッ「どうされましたか!…その姿は…」


 私は襖を開け目に写ったのは身体が蛇の鱗のようになっている静華様だった。


「み、見ないで!」


 私は静華様の事を何も知らないのだと改めて思い知らされた。









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