2章

1話

 とある、居酒屋にて2人の男性が話していた。


「おい、面白い話があるんだが聞くか?」


「なんかあったのか?」


「最近、裏の方で、ある男が話題になっててな」


「面白い男?」


「烏に新しいルーキーが現れたらしい」


「へ〜ぇ、どんな奴だ?」


「それが狐の面を被ってて顔がわからないんだとよ」


「顔がわからない?そいつが何やって有名になったんだよ」


「それがよ、たった現れて3年で烏の幹部まで昇格したらしい。」


「3年で!そりゃあすごいじゃねえか。で、年齢は?」


「それが、身長的に子供だろうって話だ。武器は刀と札を使い任務で人を殺しまくってるだけじゃなく、霊災を40件以上祓ったって話だ」


「…3年で40件以上だって、正気か?そんな化物、何処に隠れてたってんだよ」


「殺した数は確認できる任務だけで200は超えるってよ。どれも人体実験を行った組織やら悪魔信者の集まりばかり今じゃあ話題に尽きない奴だよ」


「確認できるだけで200人以上ってことはまだ殺ってるって話か…本当に子供か?」


「今じゃあ、裏の人間の間じゃあこう呼ばれてるらしい」


「血濡れの狐…血狐ってよ」




___________________________________________________


満月の大祓から3年…俺は14歳になっていた。


京都の吉備家屋敷にて


「ただいま帰りました」


「お帰りなさいませ暁仁様」


 玄関で迎えてくれたのは吉備家に仕える1人の老婆、織田清子が玄関にて私を待っていた。


「ただいま清さん」


「これ、任務先でのお土産です。皆さんでよかったらどうぞ」


「いつもありがとうございます」


「いいえ、養子の私を温かく迎え入れてくれたせめてもの礼です。お気になさらず」


「そういえば、旦那様が暁仁様が帰宅されたら広間に来るようにと仰っていました」


「わかりました。ありがとうございます」


私は、広間に向かった。


「暁仁様よ、噂では特級の資格習得までもうすぐだそうよ」


「旦那様が霊災孤児を連れてきた時は一族の殆どが反対してたみたいだけどよく成り上がったものよね」


「全く、あんな才能どこで見つけてきたのやら」


「しっー、いらっしゃったわよ」


 広間に向かっている最中そんな言葉が聞こえてくる。せめて本人がいないと所で話してほしいもんだ。やっぱり、俺がイケメンだったらこんなように言われてなかったんだろうな…死んだ目は相変わらずだし、顔もいいわけじゃないからな、他の人間からしたら少し気味が悪いんだろうな。


「「「お帰りなさいませ」」」


「…只今帰りました」


そう返して私は広間の引き戸の前にきた


「師匠、暁仁です」


「おう、入れ」


「失礼します」


私は引き戸を開け広間の中に入る


「仕事おつかれさん」


「は〜ぁ、疲れましたよ師匠、組織の奴ら人使い荒すぎじゃあないですかね〜」


「部屋に入るなり素に戻るのは相変わらずだな…」


「いいじゃないですか私と師匠の二人だけですし」


「…まぁいい、実はだなお前さんに護衛の依頼が入ってるんだが受けるか?」


「また仕事ですか?」


「今回は烏とは関係ない仕事だお前さん裏じゃあ随分と活躍してるみたいだな…異名はこちら側まで聞こえているぞ」


「異名?何て呼ばれてるんですか?」


「血濡れの狐、通称血狐だとよ」


「なんですか、その不気味な異名は全然うれしくないんですけど…」


「まぁ、その話は置いといてだ。護衛対象は一条家のある人間の護衛だとよ。」


「一条家とは…またすごい名家が依頼してきたもんですね」


 一条家とは、平安時代から長くから続く一族で代々国の政治などにも携わってきただけでなく、代々優秀な陰陽師を輩出しており、一族の中には陰陽庁長官も務めていたという歴史ある一族である。


「でだ、話ではお前さんと同い年のお嬢様らしい…」


「そんな渋い顔してどうしたんですか?」


「いやぁな、その一条の姫さん特殊らしくてな」


「特殊?」


「どうやら六感に目覚めているらしい」


「!…それは本当ですか?」


 六感とは、稀に生まれる何かしらの特殊な力に目覚めた人間の事、現在いる特級陰陽師18名中僅か6名だけが六感を有しており、六感に目覚める事で固有式陰陽術という強力な力を使うことができるという。固有式陰陽術を使ううえで六感に目覚めることは条件として必須なのだ。


「あぁ、しかも生まれつきとの話でな。そのおかげで色んな勢力に狙われているって話だ…」


「それで、そのお姫様はどこにいるんですか?」


「京都の北区あたりと聞いている」


「近ッ?!」


「話を聞いた俺でも驚いているよ」


「まぁ、困ってるなら助けますよ」


「頼めるか?」


「私が師匠のお願いを断れるとでも?」


「そこは、素直にわかりましたと言えないのかねお前さんは…」


「とりあえず、長期になりそうなんで準備してきますよ」


私が広間からでようとした瞬間


「あぁ〜、そうそうこの依頼を成功させれば特級資格の推薦を書くことができる。実績としてはこれで事足りると陰陽庁に判断されるだろうよ。お前さんが1級になって2年立つわけだし選考で落とされるとは考えづらい、これを成功させればお前さんは晴れて特級陰陽師だ」


 私は一瞬聞き間違いだと思ったが、聞き間違いじゃなければこの任務を成功させれば特級になれる…


 私は、広間をでたあと小さく喜びながら自分の部屋へと向かう。


「よッッッっし……」


 それにしても一条の姫様か失礼のないようにしないとな…


 私はそう思いつつ、新しい出会いに胸を膨らませるのだった。









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