9話
「敵討ちか…一つ聞いてもいいかな、君は何処まで知っているんだい?」
「ある程度は、秀一が書いたこの日記に書いてあったからさ」
「やっぱり、あの子か…」
「あんた化け物どもを操れるんだろ」
「何故そう思うんだい?」
「俺の推測じゃあ、あんたは陰陽師から呪術師にくらがえりした人間だからだよ」
「!…正解だよ。それにしても何故わかったんだい」
「俺さ、戦闘式陰陽術を強化するために他の陰陽式を組み込ませているからさ考えたことがあるんだ」
「それは?」
「あんたら呪術師が呪いに対する力ならそこに帝式陰陽術を組み込むことで、本来式神での契約でしか飼い慣らせない化け物を野良のまま大量に操ることができるんじゃないかってさ」
「…素晴らしい、その通りだよ」
「俺からも聞いてもいいか、何故こんな事を?」
「…君は、全能の巫女を知っているかな」
「全能の巫女」
「古来より、存在していた存在でね。陰陽師には氣があり、呪術師には呪力があり、エクソシストには神聖力がある。人は本来どちらか一つの力しか持ち合わせることができないんだけどね。稀に3つの才能と力を持った女性が誕生するんだよ。驚いたよ辺境の孤児院とかいう子供掃き溜め場所で全能の巫女がいたんだから、僕は本来氣の力しか使用する事が出来なかったんだけどね。呪術師側が初代全能の巫女である卑弥呼の墓を見つけ彼女の細胞を移植することで僕は2つの力が使用できるようになり君の言った通り化け物どもを式神契約なしで操れるようになったのさ」
「雪をどうするつもりだ?」
「3つの力は巫女特有だからね。何より生きたサンプルがそもそもない。彼女はいろんな面で役に立ちそうだ。」
「孤児院に1級陰陽師がいた事で計画に4年もかけてしまったからね。霊脈の乱れを探すのに手間取ってしまった。あの爺の監視さえなければもっと早く霊災を起こせたに…」
「1級霊災を起こし孤児院のある村を滅ぼし彼女を手に入れる事が今回の計画だよ」
「秀一を消したのは何故だ?」
「あぁ、彼は知っての通り僕のことを嗅ぎ回っていてね。里親と暮らす事を聞いた時は流石に焦ったよ。あれは単なる口封じだよ…」
「口封じの為に400人殺したと?」
「そうだよ」
橘は笑顔でそう答えた。こいつは何が悪いのか全く分かっていない。自分の欲求に忠実な…悪魔だ
「もう一つ、3ヶ月いなくなったのはなぜだ?」
「情報は独り占めしたくてね。情報の隠蔽をしていたんだよ」
「じゃあ、雪の存在はあんたしか知らないわけだ」
「それがどうしたんだい、氣の量だけが多い2級下位の力しか持ち合わせていない君がこいつをどうにかできると?」
橘は空に指さした。そこには300メートルはゆうに超える。蛇のように長く、体は鱗で覆われ、顔は獅子のように獰猛、口は裂けたように大きい…龍が雷雲と共に空を支配していた。
「グルルルル……」
「こいつは成龍、龍の中ではまだ小さい方だけどね。間違いなく1級の怪物だよ。こいつは待機させておくよ君はそれどころじゃないだろしね」
光の柱から沢山の化け物が姿を現した。土蜘蛛、鵺、天狗、黒入道、牛鬼、鬼童丸どれも明らかに人間より大きく、危険なのがわかる。
「どれも2級から3級の化け物達だ君にこいつらを倒せるかな?」
「あんた、俺が氣の保有量がこれだけだと思っていないか?」
「何?」
俺は莫大な氣のコントロールを解除し全開にした。それを身体に循環させていく。天まで届く氣の塊に橘は驚いていた。
「…ひ、人からこんな量の氣が…あ、ありえない」
「橘孝介あんたを倒し、秀一の弔いとさせてもらう。覚悟しろ手加減はなしだ」
俺は刀に札をかざし唱える。
「カケマクマクモカシコキ大神ヨ我が名をもって目の前敵を打ち倒さん鬼哭黒炎符急急如律令」
刀から黒炎が立ち昇る。俺は、目の前の化け物に突撃した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます