7話

あれから1週間が経ち体調が戻った俺は現在師匠からの手解きを受けていた


「ハァッー、ハァッー、ハァー」


「お前さん何をそんなに焦っている…お友達が死んじまったからか?それとも何か後ろめたいことがあったからか?」


「ックソ…」


「師匠は何か知らないんですか…なんで龍なんていう1級の化け物が急に出てくるんですかどう見てもおかしいじゃないですか」


「…俺はこの件は人為的だと考えている」


「えっ…」


「いくら1級の化け物のがこの世界に特級霊災後まだ生息しているにしろ元々龍はうちの国には滅多に現れることはない、それに大体の龍は40年長い時間眠りにつく事がほとんど…前回の目撃情報は約5年前現れるにしては早すぎる」


「誰が意図的に呼び起こしたということかよ」


「可能性は高いな」


「いったい誰がそんな事を…」


「そんな事を出来るとしたら呪いを専門にしている呪術師共だろうが…何か引っ掛かる…」


「師匠ありがとう…ある程度わかったよ」


「そうか、今日の指導はここまでにするか」


今日の指導が早めに終わり俺は孤児院へと戻った。

食堂に行くとあいつら4人は誰一人いない、あれから顔が合わせづらくここしばらく会っていない。

変わりに一人の70歳くらいの老婆が食事をしてはティッシュに吐き出しを繰り返していた。それに俺は汚いなと思いつつあの人の事を思い出す…確かあの人は内の園長先生だ、久しぶりに見たな。


「こんにちは、暁仁くん」


「俺の名前知っていたんですか?」


「えぇ、ここにいる子達、今までいた子達、皆の顔も名前も覚えていますよ」


 俺は園長先生の隣の席を使用する。なんとなくそうするべきだとその時の俺はそう思った。


「あなたは、何か死にたいと思い詰めてはいませんか?引けなくなって迷ってしまったそんな顔を今のあなたはしていますよ」


「わかるんですか?」


「えぇ、勿論」


「園長先生はなんで食事を吐き出しているんですか?」


「…病気なんですよ」


「いつから?」


「私がまだ20代になる前からです。おかげで週に病院の点滴や薬を飲まないと生きていけない体になってしまいましてね」


 俺は園長の座っている席に目を移した。そこには何十種類もの薬が机の上に置いてあった。


 この人は、薬漬けなんだそうじゃないと生きていけない、痛々しいそう思うと共に左手の薬指に指輪がはまっているのが見えた。


「結婚されているんですか?」


「えぇ、お陰で子供にも恵まれました」


「生きている事が辛くはないんですか?」


「とても辛いですよ。それに苦しくもあります」


「なんでここで働かれているんですか?家でゆっくりしてたほうがいいんじゃないかと思うんですけど?」


「優しいんですね、確かに家でゆっくりしていたほうがいいのでしょう。でもね、あなた達の為に何かできればと思ったのよ。あなた達が少しでも幸せを感じられるように…あなた達が少しでも笑顔を絶やさないようにそう生活してほしいと思ってね」


「なんで、俺達の為に悪い体を引きずってまでそこまで働くんですか?」


「それが今私にできることだからですよ」


 園長先生はそう笑顔で答えた。あぁ、この人は気高い人なんだろう…己の誇りにまっすぐで生きるということの大切さを誰よりも理解している。


「園長先生は今幸せですか?」


「えぇ、旦那に出会えた事も子供が生まれたこともそして今もとても幸せですよ」


「そっか…園長先生」


「ん?どうしましたか」


「ありがとうございます」


「えぇ、どういたしまして」


 俺は、その言葉だけいい食堂から離れた。お陰で希望と決意をもらい。俺は力強くその一歩を踏み込む、あの人が動くとしたらそろそろだろう。準備しておかないとな…




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