2話

 ズドーンズドーンと音共に孤児院のグラウンドで複数の水柱が立ち上る。


「水流六法」


 秀一が腕につけている時計型のデバイスで片腕を前に伸ばし省略式陰陽術を使用する。


 すると俺の周りには六つの水流が発生し襲いかかる。俺はポーチから1枚の札を木刀にかざした。


「鬼吭炎符急急如律令」


 俺は木刀が術式で燃えないよう氣で補い戦闘式を使用した。すると、木刀から炎が発生し剣の形状に変化した。


「鬼刀…陽炎」


 俺は6つの水流がこちらに到達するギリギリのタイミングを狙い陽炎を叩き込む。


プシューと音と共に水流は広範囲で蒸発、むやみに動くのではなく蒸気が消えるまでその場に留まる


「土木兵」


 秀一は、その間に土と木でできた人形を3体生成しこちらに攻め入った。


それを俺は昔師匠にやられた方法で対応する


「「爆ぜろ」」


俺がそう言うと2体の土人形が爆散したが一体こちらに向かってきた為、俺はそれを陽炎で斬り伏せる


「おらっ」


 その隙に俺は油断した秀一に接近し陽炎を突きつけた


「勝負あり、勝者暁仁」


「よっしゃー、これでお前に20勝したことになるな、このまま追いつくのもあっという間かもよ」


「今回はまぐれだ…それに俺はお前に27勝しているまだ追いつかれてはいない」


「案外もうすぐじゃねえか、負け惜しみか?」


「いいだろう…もう一度だ」


「ちょっとあんた達、次が控えてるんだから早くどきなさいよね」


「チッ…次は俺が勝つからな」


「おうおう、のぞむところよ」


「いや〜、暁仁くん今のは凄かったね最後にやったのはなんなんだい土人形を爆散させた術は?」


「いゃ〜、それほどでもないよ橘兄ちゃん最後にやったのは氣を応用した技術でさ、土田さんに内緒で教わったんだ」


俺は師匠ではなく土田さんに教わったと嘘をついた


「あ〜、もしかして言霊を利用したんだね。その歳で凄いじゃないか」


「って言ってもまだまだ何だけどね。3体同時破壊するつもりが2体しかできなかったし」


「いや〜、そのまま頑張れば大丈夫だと思うよ」


「橘兄ちゃんにそう言われると自信つくよありがとう、俺頑張るわ」


そして、俺は他の奴らの模擬戦をグラウンドの端っこで観戦している中、雪がこちらに近づいてきた。


「暁仁、秀一と模擬戦したときに使用したの氣を利用したものっていったわよね。それ私にも教えてくれない?」


「そのうちな…でも雪の場合それなしでも強いから大丈夫じゃねえか?」


「嫌よ、だってあんたに負けた気がするしそれに氣の量は年齢と共に増えていくじゃない成長期みたいにだから今のうちコントロールしておきたいの」


「…了解、予定が合えばな」


「あんたの師匠って人に教えてもらってもいいけどね…」


ギクッ「何のことやらさっぱりさっき話てただろ土田さんに教えてもらったんだよ」アセアセ💦


「私が気づいていないと思った。私と秀一2人であんたのあとをこっそり付けた事があるの」


「えっ…!」


「驚いたたわよまさかあんたが知らないおっさんにボコボコにされてたんだから」


「い、嫌~まさか跡をつけられてたとは思わなかったわ。全く気づかなかった…」


「あんたの師匠は気づいていたみたいだけどね」


「それであの人誰よ。この際教えてくれたっていいじゃない」


「一応陰陽師、詳しくは聞いてないけどな」


「本当にそれしか聞いてないの?」


「おう」


「ふ〜ん、まぁいいわ」


 俺はまた嘘をついたでも言えるわけねえじゃねか特級陰陽師に指導してもらってるなんてよ。


「あんた、嘘つくとき首を撫でる癖直したほうがいいわよすぐにバレるから」


「えっ!」


「気づかなかいみたいだから教えてあげる。じゃあ私は、秀一のところに行くから」


 そう言って雪は、秀一がいる方へ向かった。俺は知っている雪の好きな奴は秀一であることをアイツと2人でいる時、雪はとても浮きだっているから…  


 だから俺が雪の事を好きになることはない…そう決してないはず…なのに何故こうも見ているだけで胸が痛いんだろか…


「さて、今日のカリキュラムはここまで皆の模擬戦をみていると色んな創意工夫がみられてとても面白かったよ。また次の模擬戦も楽しみにしている」


 橘兄ちゃんがそう締めくくり本日のカリキュラムは終わった。

 

 俺はこの後、何をしようか考えていた。師匠は本日は多忙で不在にすると聞いていたため一人で剣術の練習をしようか考えていた。


「ん?」


 俺が木刀を持って歩いていると1人の老人が草むしりをしていた。


「こんにちは、土田さん」


「ん?やぁ、あきとくん元気かい」


「元気だよすごくね」


 俺はそう答えるとさりげなく草むしりを手伝い始めた。土田さんとは、話ておきたかったからだ…


「どうしたんだい、急に手伝ってくれるなんて」


「土田さんにお礼を言っていなかったと思ってさここ数年土田さん急に孤児院にいなかったし俺も話す機会が中々なかったからさ」


「ちょっと、僕も忙しくてね〜、ここに顔を出したのも久しぶりかな」


「師匠に俺のこと紹介してくれてありがとう。おかげで自分のやりたい事を見つけることができたよ」


「吉備くんには話は聞いているよ。本当にここを出ていく時、記憶の封印を皆に施すつもりなんだね」


「うん、そう決めたんだ俺…皆を守れるならそうしようって覚悟を決めた」


「一つ聞いていいかな?」


「何土田さん」


「何で僕なんだい?」


「土田さんは口が硬いからさそうしてくれると思ってさ土田さんには迷惑かけるかもだけれどさお願いできる?」


「いいけど条件があるよ」


「何?」


「今を大切に生きることそしたらこれからどんな辛いことがあってもあきとくんは頑張っていけるはずだから」


そういいながら着けていた軍手を取り俺の頭を優しく撫で始めた。


「我慢強い子だでもねあきとくん自身が自分の幸せを捨てると言うなら許可はできない約束出来るかな?」


「…うん、約束する」


「本当に優しい子だ」


土田さんはポケットから1枚の札を取り出した


「これは?」


「吉備くんに剣術を教えてもらっているだろう。

これは僕が陰陽師時代に愛用していた簡易式だこの中には一振りの刀を取り出すことができる式が組み込まれてる…君にあげるよ」


「いいの?」


「なぁに、歳をとってからは使わなくなってしまったからね。君に使ってもらったほうが僕も嬉しいんだ。どうかその刀と歩んであげておくれ」


「わかった。ありがとう土田さん」


 土田さんは笑顔でこの刀を俺に託した。土田さんに頭を撫でられながら俺は自然と涙を流していた。

期限はあと2年もないそう思いながら俺は草むしりを再開した。











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