第5話

 現在俺は、吉備藤助というおっさんと墓地の階段で腰を下ろし話していた。


「おっさん聞いてもいいか?」


「何だ坊主弟子入する気になったか?」


「俺の質問に答えてもし面白そうだったら考えてもいいよ」


「質問か…いいぞ」


「じゃあ、まず一つ目おっさんは陰陽師ってやつなの?」


「そうだが、もしかしてお前さん陰陽師に会うのは初めてか」


「うん、孤児院でもうすぐ陰陽師の教育があるのは聞いたけど陰陽師については今本読んでて知った」


「ほう…その3冊の本は陰陽師についての本か?」


「2冊はそうだよ、後1冊は歴史の本」


「歴史が好きなのか?」


「うん、とくにこのハンニバルが好きなんだ」


「それで、おっさんはなんで俺を弟子にしたいのか聞いていい?」


「理由か…お前さん感じ取れてるだろ「氣」を」


「!…」


 俺はそう言われて大きく目を開いておっさんの方に顔を向けた。


「その顔からするに気づいてるんだな、いつからだ?」


「「氣」っていうのは初めて聞いたけど空気でも熱でもないのが身体中に流れてるのは2年前から感じてた、身体だけじゃなく物や自然、万物全てにこの氣が流れているってこともいつの間にか感じ取れていた」


「ほう…すごいな」


 そう言っておっさんは興奮したように無茶苦茶喜んでいた。まるで「見つけた」とこちらにいわんばかりに…


「この「氣」って何なんだ?」


「陰陽師が力を行使するのに最も必要なものだよ陰陽師の根源と言ったらわかりやすか、それを感じ取り使えなければ上級以上の霊災に対処することができないんだ…あいにくお前さんは氣の感知能力と保有量がその歳で尋常じゃない」


「お前さん過去にいろいろあっただろ何かに対して憎しみを抱いたり抱えきれない悲しみを感じるような出来事が」


「なんでわかるんだよ」


「「氣」はそういった感情によって膨れ上がるだけじゃない魑魅魍魎どもや神どもに好かれやすいんだ普通の人間が見えないもが見えるようになったり感じ取りやすくなるんだ」


「勿論生まれつきってのもあるが…お前さんのように経験からなるものとは比較にならない多分お前さんだけじゃなく孤児院にいる子供達もそんな感じだろう。だから陰陽庁や国の連中はお前さん達が7歳を迎えてから陰陽師としての教育を始めてる」


「普通は違うのか?本には一般人でも対処可能な魍魎や霊災があるって書いてあったけど」


「確かに下級霊災などは一般人にも対処可能だ」


「一般人の人間にはそれなりの戦い方ってのがあるんだが大体は陰陽庁から発行されている札を使うことが多いな。今はだいぶ陰陽師の戦い方は変わっているが…魑魅魍魎どもには印や札、祝詞などを使用して戦うな」


「お前さんのその経験からなる才能は特級陰陽師を目指すこともできるだろう…どうする?」


「面白いの?」


「俺は自身国のお抱えでもあるし、裏組織にも所属してる…歴史が好きと言ったな歴史の深淵を覗いてみたくわないか?」


「所属してる組織ってのは何?」


「名前は組織上のルールで言えないことになってるからな…しいて言うなら「烏」だ」


「「烏」ね…」


「烏は一人一人が尋常じゃない武と陰陽道を極めている。どれも今まで存在した特級陰陽師を超える人間や武人が烏の上層13名程いるその他も強い奴がゴロゴロいる少数精鋭だがな80人いるかいないかだただ全員が強いどうする」


 俺はこの世界に息苦しさを感じていた…どうして俺達は他所の人間にこんな扱いをされてあいつらだけなんであんなに幸せそうにと…嫉妬していた誰も俺達の存在を知っておきながら誰も見向きもしない救ってもくれない道端にいる触れてはいけない醜何かをみるように、可哀想とは思っても関わろうとはけしてしない…それがどれだけ苦痛だっただろうか。


 わかっていた俺達は心の中で全てを憎んでいることに、でも土田さんが言ったように苦しみをわかるぶん誰かに優しくもなれる…だけど優しい奴が幸福になるとは限らないこの歳で嫌と言うほど味わっているだから俺は…


「おっさんの弟子になれば強くなれるか?」


「あぁ、ただお前さんに待ち受けてるのは絶望かもしれない」


「俺の家族(孤児院)の奴らを守れるか」


「あぁ、お前さん次第だが、今より守ることはできるはずだ」


そして俺は今抱いてる夢を口にした


「子供が笑って暮らせる世界を作れるか」


「!…作れるかどうかはわからん。だが、お前さんに待ち受けてるのは破滅かもしれんぞ…それでもお前さんは自分の人生を犠牲にする覚悟はあると?その歳で…」


「歳なんて関係ないだろ、俺はただ誰かが笑って幸せでいてくれるなら俺が不幸になろうとどうなろうと構わないそんな世界があるなら俺は迷わずそっちを選ぶよどれだけ他の人間に後ろ指をさされようが恨まれようが破滅が待っていようが関係ない」




 そう俺はおっさん嫌…吉備藤助の目をまっすぐ見た。藤助さんは笑いながらこう言った。


「クッククアッハッハッハ…嫌やはり俺の感は捨てたもんじゃないお前さん面白いな誘った身ではあるが逃げられんぞ」


「あぁよろしく頼むおっさん嫌…師匠」


「明日はいつ空いてる?」


「土日だから両方空いてるよ」


「よし、じゃぁ明日から修行だな世話してる大人には俺から口を聞いておこう孤児院に土田って爺さんいるだろあの人は昔からの仲だからな安心しろ坊主嫌…暁仁」


「えっ〜!マジかよ」


 そんな会話をしながら俺は師匠と握手を交わした。気づけば空は夜にむかって綺麗な夕暮れをむかえるのだった。





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