第2話
孤児院の朝の生活は、6時に起き、朝食を食べた後施設内の清掃から始まる。孤児院の大きさは、縦50メートル、横40メートルの2階建てだ。
孤児院の前には、30メートル程の小さなグラウンドが広がっており、朝の清掃を終わらせた子供が遊び始める。
現在、この孤児院には30名程の子供が住んでおり孤児院で働いている大人は6名1人4名〜5名の子供を担当に持っている。他には孤児院の経営を担当している園長先生、孤児院に定年退職後も手伝いに来ている土田という男性を合わせると大人は8名がこの孤児院に在籍している。
「きゃー」「待て〜」
現在グランドには、他の奴らが楽しそうに遊んでいる中、一方俺はというと…
「あ〜もう、土田さんあとどれくらいあるのー」
「もう少しだから頑張ろうか」
「あと何分くらい〜」
「そうだねー、じぁ20分草抜きしたら終わろうか」
「わかった」
「それよりあきとくん」
「何、土田さん」
「今回は何をやって草抜きを手伝ってくれたんだい」
「ギクッ、イヤ~公園でデカいバッタがいてそれ見てた時に、他所の奴らに親なしって言われて…その」
「カッとなって殴り飛ばしてしまったと?」
「うん」
その時の土田さんの顔を俺は見ることができなかった。後ろめたさがあったからなのか土田さんに嫌われるのが嫌だったからなのか。
そんな時、土田さんがこんな事を口にした…
「草を見ていると何でこんなに何回も生えてくるのかとそうは思わないかな?」
「あぁ…うん、急にどうしたの?」
「草だけじゃなく自然全てが寄り添うように支え合うように今という時間を必死に大切に生きているんだよ人はそれを見て自然とそれに目を奪われ美しいと感じるんだよ」
心が震えるとはこの事を言うのだろとこの時の私はそう思った。
「何故だかわかるかい?」
「……わかんないかな」
「…人と似ているんだよ自然の生き方っていうのはだから目が離せなくなる。」
「そして、自然は自分達を守るために時には牙を向け攻撃することもあるんだよ」
「今の君に似ていると思わないかい?」
その時、胸の中が鷲掴みにされるような痛みが俺を襲った。そして、この次に言おうとする言葉を言わないでくれと、同時にそう思った。
「あきとくんは少し違う、君の行動はまるで僕は一人ですと訴えているようだと思うんだけどどうかな?」
「土田さんは、わかるの?今の俺がどう思っているのか?」
「伊達に歳はとっていないからね」
「それに、ここの子達それぞれがいろんな事情を抱えて、自分の闇を隠すように生きている」
「君は今泣けているじゃないか」
そう言われた時に自分が涙を流していることに気づいた。
「涙を流せるということは、誰かを思いやる気持ちを持っているということだよ」
「だから今はそれでいい、ゆっくりと自分というものを探していけばいい」
「今生きてる人達そういった基本的なことを忘れつつある。人として何を大切にしなければならないのか他の大人や子供つねに迷子になっているんだ」
「他の奴らが迷子?」
「そう、人生だけじゃなく、心も迷子になっているんだよ」
「心…」
「君は過去にいろんな悲しいことがあって今この場所にいる。だけど辛い思いをしたからこそ君は、誰かに寄り添うことのできる優しい人間になれると私は思うよ。」
「だから…いつかでいいから人に優しくありなさい。命というものを大切にできるそんな当たり前ができるようになりなさい。君達が笑顔で生きているだけで私はとてもうれしいのだから」
「俺もなれるかな?」
「あぁ、なれるとも」
笑顔を浮かべながらそう俺に言った…
「それに」
「暁仁〜」
後ろをみると俺の名前を呼びながら走ってくる2人がいた。
「土田さん私達も手伝いますよー」
「暁仁が迷惑かけたんじゃないですか?」
「いいや、そんなことはないよ」
「年寄りながらついつい語っちゃってね〜」
「何の話をしてたの暁仁?」
「お前泣いてるのか?」
「いや、何でもない…」
そう言って涙を拭い草抜きを再開した。土田さんは隣でこう言った。
「どうだい?今の君は一人かい?」
あぁ~この人はかっこいいなとそう思いながらこう口にした。
「いいや、違うね」
この時の俺はとても救われたそんな気持ちになっていた。
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