第1話 衝撃①

灼熱の日差し、雲ひとつない空、そんな真夏のなかで県大会が始まろうとしている。


ここは千葉県。

今日はサッカーの中学校県大会1回戦。


この暑さのなか、中学生たちは負けたら引退の試合に臨もうとしている。



北野「おはよう!」

みんな『おはよう!!!』


北野吾(きたのみち)。中学校サッカー部の中学3年生、ポジションはトップ下。身長は160cmで体格は細く、小柄だ。


いま、北野に挨拶したのは全員、船橋東中学校サッカー部だ。


北野の後ろから突然、肩を組むロン毛の男が現れる。



南野「おはよう吾。 今日は夜ふかしてない        

    よね?」

北野「今日はさすがにしないよ。大会だよ。」

南野「それは良かった。 おまえはほとんど夜ふ     

    かししてるからな。」


北野はオタクなところがあり、ゲームをしたりアニメを見たりしてよく夜ふかししている。


ロン毛の男の名前は南野虹心(みなみのにこ)。中学校サッカー部の3年生で主将。ポジションは右サイドバック。

北野と南野は小学校で同じサッカーチームでプレーしていた。


北野と南野だけではない。船橋東中学校の3年生は全員、小学校から同じサッカーチームでプレーしている。



 「ブーン!」

そんな話をしていると、駐車場にバスが来た。


南野「あのバス、」


 「プーン!」

バスのドアが開く。

そこから、黒のポロシャツを着た集団が出てきた。


!!!「間違いない。

    あれが今日の対戦相手の黒龍中だ。」


黒龍中学校。中高一貫校であり、千葉県のサッカーの絶対王者。

全国大会も何度も優勝しており、全国トップレベルの中学校。

高校の方ではインターハイ、選手権などの大会を何回も優勝している。


南野「今年の黒龍中の代は過去最強とも言われてるんだって。そんな過去最強の代のエースが、」


南野の見ている人に船橋東中サッカー部の視線が集まる。

もちろん、北野も視線を集める。


南野「佐竹剛

あいつは小学校のときから、ナショトレに             選ぼれれてて、去年なんて、14歳でu15の日本代表に飛び級で選ばれてる。

まさに日本の至宝。」


ナショトレ…ナショナルトレセンの略。

      


船橋東中の選手「そんなやつ止めれんのかよ。」


南野「大丈夫だよ。お前なら止めれるよ。」

!!!がチームメイトを鼓舞する。



北野は佐竹を見つめている。


北野「俺にはあんなんになれないな。」



監督「おーい!

   荷物運んでくれ。」

…中学校サッカー部の監督が車に積めていた荷物の運びをお願いする。


みんな「はーい! わかりました。」




試合会場の観客席。


謎の男「あー、早く着きすぎちゃたかな。」


そう言うとこの男は、観客席に座り緑色の芝を眺めていた。

年齢は見た目的に20代くらいで整った顔立ちをしている。


謎の男「懐かしいな〜。

俺も昔ここでプレーしたなぁー。


今年の黒龍中はどれだけ強いのかなぁー。」



北野たち船橋東中学はロッカールームに着いた。


南野が緑色のコートを見つめる。


南野「いつも砂で練習してるから、大会は良いよな。 芝でプレーできて。」


北野「でも、強豪校の黒龍中学校の皆さんは毎日芝で練習してるよ。」


南野「だけど、そんな強いところに勝てたらすごくね!」


南野は笑顔で言う。


北野「(おまえはなんで、1ミリも負ける気がしてないんだよ。)」


北野は南野を尊敬しながらどこか嫉妬していた。



試合開始1時間前。

アップが始まった。


北野が黒龍中のアップを見ると、


 ポン ポン ポン


北野「蹴る音から違う。」


北野は黒龍中のアップを見て弱気になる。


上手い選手のボールを蹴る音は下手な選手とは違う。

ボールの中心を正確に蹴る音。

蹴る音はとても心地よく、何回でも聞いていられる。



 ザワザワ ザワザワ


観客席からたくさんの声が聞こえる。

北野が観客席を見てみると、県大会の1回戦とは思えないほどの人が集まっていた。

観客の視線は佐竹に集まっている。


北野「(すごいなー。

同い年なのにたくさんの人が見に来て、俺だったらあんな[才能]あってもプレッシャーで潰されるか、調子乗って練習サボりそう。)」



謎の男「橋浦監督。 ご無沙汰してます。」


謎の男が観客席から黒龍中の監督、橋浦哲郎に挨拶をする。


橋浦監督「おー久しぶりだな。最後に会ったのは6年前か、

元気にしてたか。」


謎の男「はい。 橋浦監督も元気そうでよかったです。

今年の黒龍中は強そうですね。」


橋浦監督「まだまだだ。

過去最強とか言われてるけど、中身は全員まだガキだ。

俺ら指導者があいつらに線路を作ってやらなきゃな。


今日は応援よろしくな。」


謎の男「はい。

楽しみにしてます。」



試合開始が近くなった。

両チームともアップが終わりユニフォームに着替える。

船橋東中学校は青のユニフォーム。キーパーは赤色。

黒龍中学校は黒のユニフォーム。キーパーは緑色。


佐竹は10番を着けている。

北野も10番を着けている。

南野は2番だ。


南野「北野! おまえ、佐竹と同じ背番号じゃん。 頼むぞ10番!」


北野「よその10番と一緒にしないでよ。

あっちの方がよっぽど凄いんだから。」



スタメンの選手たちが整列する。


北野が観客席の方を見てみると、《成長を止めん》という黒龍中の横断幕が飾られていた。


それだけではなく、黒龍中の1年生や2年生が応援席に立っていた。

試合になったら応援をするのだろう。

ちなみに、船橋東中には横断幕も応援もない。



だが、北野が観客席を見た理由はそれではない。

観客席を見渡してみると、北野に手を振ってくれてる人がいる。


北野「おばあちゃん。」


北野も手を振り返す。


手を振ってくれたのは北野の祖母だ。

こんな暑いなか、応援に駆けつけてくれた。



 ピー


審判の笛とともに、選手たちがコートに入る。

選手たちが観客席に挨拶をする。


挨拶をしたあと、両チームのキャプテンが審判のところに集まる。

コイントスの結果、黒龍中ボールで試合が始まることになった。


原口「よろしくお願いします。」


そう言うと、原口が南野に握手を求めた。


原口司統(はらぐちしとう)。黒龍中サッカー部の3年生であり主将。

去年はu14のナショトレに選ばれていた。

ポジションはセンターバック。身長は175cm。


南野「よろしくお願いします。」


すかさず、南野は原口に握手をした。



両チーム円陣をする。


原口「俺たちの目標は日本1だ。ここは通過点。

いつも通りのプレーをしてこう。

いくぞ!」


黒龍中「おー!!」



南野「俺たちは小学校から一緒にプレーしてきた。

小学校のときのチームの11人中10人はこうして中学校でもプレーしてる。

だから、ここで負けたくはない。

みんなとまだ一緒にサッカーしてたい。

気負わずに勢い持ってプレーしてこう。

いくぞ!」


黒龍中「おー!!!」



選手たちがポジションに着く。



 ピー

審判の笛とともに、黒龍中ボールでキックオフする。








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