翌日(ベッドに横になったらすぐに寝てしまった)、俺とセリーナは国王からの使者に連れられて、王宮に来ていた。今は控室で王様を待っている。王宮もゴージャスだったが部屋もなんかすごい。シャンデリアとかがピカピカしてる。こういうのを見ると、やっぱり異世界なんだなって思う。まるで観光気分だ。


「セリーナ、体調はどうだ?昨日はずっと寝ていたけど」


「体調ですか。もう万全です。万事完全、仕上がってます。流石はお父さんの魔法ですね!」


「そうか。元気そうなら良かった」


「ライさんは逆にあまり元気そうに見えませんね。まだ今日はセクハラ発言もしていませんし。私としてはうれしい限りですが」


「そんな一日一善みたいな頻度でセクハラしねえよ。つーかセクハラ発言って何のことだ?キオクニナイ。それはともかく、元気がないのはあれだよ。王様ってほら、変なことしたら打ち首にされるじゃん。だからちょっとセーブしてるんだよ」


「どんな王様ですか」


もちろん俺の勝手なイメージだが。ハンムラビ法典の目には目を歯には歯をみたいな感じ。考えてもみればやったことをそのまま仕返しされるってえぐいよな。


「でも、国王様は気さくな親戚のおじさんって感じですよ。私もお父さんについて行って子供の頃に何度か会ったことがありますが、めちゃくちゃ可愛がられました」


「へえ、つまりはロリコンか」


「違います!国王様を勝手にロリコンにしないでください。あなたじゃないんですから、普通に可愛がってもらっただけです。何もされていません。お菓子とか貰っただけですよ。ていうかそんなこと絶対に国王様に言わないでくださいね。優しい国王様ではありますが、その発言を食らえばさすがに打ち首にされます。私も庇いません」


「分かってるよ。ていうかセリーナ。あなたじゃないんですからってどういうことだ」


「そのままの意味ですよ。え?逆に違うんですか」


「ちげーわ。人を勝手にロリコンにしてくれるな」


「国王様を勝手にロリコン認定したくせにどの口が言ってるんですか」


「それはそれ。これはこれだ」


いつも通りそんな馬鹿話をしながら国王様とやらを待っていた。先程聞いた話だが、俺たちは今後、国軍に所属することになるらしい。じゃあギルドに加入した意味とはってなるかもしれないが何事も経験だ。

しかし国軍でバリバリに軍人として働くってことではなく、特別部隊的な扱いらしい。給料って言うか活動のための金は結構な額を貰えることになっている。

がめついかもしれないが金額も聞いておいた。びっくりする額だった。

正直魔王のこととかどうでも良くなるぐらい。それはもちろん冗談だが、とにかく十分すぎるほど支給されるらしい。

後、明日貴族たちのパーティに出席して堂々と俺の名前を広めるらしい。何だか気が乗らないがそういう表舞台に立つことも含めての勇者だと言われた。

なにはともあれ浮かれてはいられない。これから本格的に勇者として活動していくのだ。気張っていこう。

―とは言ったものの、国王様とのファーストコンタクトやら貴族とのパーティやらは省かせていただく。ただ緊張してほとんど覚えていないから、とかいう理由ではないから勘違いしないように。話すまでもないとの判断だ。

もしかしたら今後話すことがあるかもしれないけれど。

まあでも、今後の展開のために言うことがあるとすれば、パーティで軍のお偉いさんと仲良くなった。それで、今度軍に視察でも来ないかと誘われ、あと、相談したいことがあると言われた。

というわけで話は飛びます。軍の訓練場だ。段取りが悪くて申し訳ないが国王との話とかオールカットしたから仕方なく、だ。大体パーティから一週間後くらいかな?


「おお!先日ぶりですな、勇者殿。まさか本当に来てくれるとは。忙しくなかったですか?」


こちらが軍のお偉いさんこと、ジャックさんだ。パーティでも気さくに話しかけてくれて、俺自身嬉しかったから今こうして訓練場に来ている。

大きなパーティで独りぼっちってめちゃくちゃしんどいからな?

孤高の天才とかいう言葉があるけどあんなもん意地張ってるだけだ。本当は誰かと仲良くなりたいけど、自分から行くのもなんか違うってなってるだけだから。みんなもそういう人を見かけたら話しかけてあげてね!

まあそんな孤高の天才とはいかないまでも大分心細い思いをしていたから(セリーナはなぜか貴族の次男坊とかから話しかけられていた)ジャックさんが話しかけてくれた瞬間から心を許した。


「どうも。先日ぶりです。勇者と言ってもまだまだ未熟なものですから全然忙しくないですよ。国王様とかからまずは仲間集めじゃなって言われたけどその見通しすら全然ですからね」


ちなみに今日はセリーナはいない。今あいつは教会で色々な手続きをしている。俺と一緒で国軍に所属することになったセリーナだが、もともとは教会のシスターなので、面倒な手続きが色々あるらしい。良く知らないが。

というわけで俺は今一人で来ている。


「仲間、ですか。実は勇者殿に相談したいことっていうのは、その仲間集めについてなのです」


「え?良い人紹介してくれるんですか?」


これは思わぬ収穫だ。仲間集めと言えばギルドなのだが、そのギルドに行くのが億劫だったのでこんな形で見つかるとは。


「良い人、かどうかは分かりませぬが腕は確かです。僕の親友の娘なのですが、今は

森にこもっています」


「森?」


一気に怪しくなったぞ。


「はい。森。ですが、ここから先は本人と話していただきたい。僕が紹介しておいてなんですが、あの子はちょっと人とはかけ離れておりまして。たしか通り名が―廃屋はいおくの魔女」


「廃屋の魔女?」


「それは単純に廃屋に住んでるからそう言われているだけでしょうね。意味はないと思います」


「紹介してくれるのは分かりましたけど、相談ってのは何ですか?」


「それは―5年前ぐらいですかね。あの子の両親、つまり僕の親友二人は魔物に殺されました。それ以来あの子は自分の殻に閉じこもり森の奥に籠ってしまったのです。そこで、勇者殿にはあの子を連れだして欲しいのです。あの子はまだ若い。生きていれば楽しいことが沢山あるのにそれを経験しないなんてもったいない。それに、二人に頼まれたのです。あの子を頼む、と。本当は僕が何とかしなければならない問題ですが、如何せん子供心には疎くて。それで心苦しいのですが勇者殿に」


「なるほど。何となく事情は分かりました。じゃあ、その森の場所を教えてもらえますか」


「引き受けてくれるのですか!」


「まあ一応、会うだけあってみようかなぐらいには思ってます。それで、森ってどこのですか?」


「ああ、ありがとうございます。森の場所は……」


そうして俺は廃屋の魔女とやらに会いに行くことにしたのだった。





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