第3話
「嘘をつけない兵士がいた」
山崎さんは突然そう言った。
「本当に嘘がつけない男だった。上官に殴られても、本当のことしか言えない。みんな彼のことを馬鹿だと思っていた。でもね、彼が一番長く生き残った」
なぜですか、と僕は聞いた。
「わからない」山崎さんは首を振った。「でも思うんだ。嘘をつけないということは、幻想を持てないということだ。希望も絶望も、結局は幻想だ。彼にはそれがなかった。ただ現実だけがあった」
蝉の声が、また聞こえてきた。遠くで救急車のサイレンが鳴っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます