第3話

「嘘をつけない兵士がいた」


山崎さんは突然そう言った。


「本当に嘘がつけない男だった。上官に殴られても、本当のことしか言えない。みんな彼のことを馬鹿だと思っていた。でもね、彼が一番長く生き残った」


なぜですか、と僕は聞いた。


「わからない」山崎さんは首を振った。「でも思うんだ。嘘をつけないということは、幻想を持てないということだ。希望も絶望も、結局は幻想だ。彼にはそれがなかった。ただ現実だけがあった」


蝉の声が、また聞こえてきた。遠くで救急車のサイレンが鳴っていた。

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