第6話 月影に静かに揺れる夢の花

「シーラ……この子が話したくらげさ。弟子にしたのさ……さて、私はちょっと用事を済ませるから頼むよ。くらげ…シーラの言う事をよく聞いておくんだよ……いいね。」

 わかった、と軽く頷いて見送ると改めて自己紹介をしてくれた。

「私はSheila O’Connor (シーラ・オコナー)と言ってね。まぁ時代遅れの魔法使いさ。表のカフェは旦那が細々とやっていてね。私の本業は魔道具を作るのが専門なのさ。 くらげは、魔法は使ったことあるかい?」

「いいえ……まだないです。」

「そうかい?なら、ちょっとやってみるかい?リッキー!おいで!こいつはヴォジャノーイのリッキーだよ。見ていてごらん。」

【光よ、我が手に宿れ。魔力を集め、花となれ。美しき色と香りを纏い、この瞬間、命を与えよ】と唱えると手のひらサイズのクリスタルが綺麗なガーベラの形に変化した。とても不思議で、ガーベラに触れると消えてしまった。

「さて!くらげ……次は君の番だよ!リッキー力を貸しておやり」

「シーラの頼みなら仕方ないな。くらげ……行くよ」

 シーラからクリスタルを受け取ると目を閉じて集中した。

 「くらげ……集中してクリスタルに魔力を流し込むイメージで体の中の血や肉が風に乗り、水の流れとなるイメージ言葉は身体の中から湧き出てくる言葉をそのまま声に乗せてごらん」

 イメージをしていくと月夜に輝くブルースターの花畑が浮かんだ。そうすると自然と言葉が出てきた。

 【海の深き青、光の結晶よ、花びらの舞いを呼び覚まし、波のささやき、風の歌この手の中に美を宿せ。花よ、咲け、クリスタルのように。】と唱えると急にシーラの声がした。

「くらげ!やめなさい!」

 その声に驚いて目を開けると工房一面にクリスタルの花が咲き誇っていた。あまりのことで驚いているとサメリアが帰ってきた。

 「シーラ……困るよ。勝手に弟子に魔法を教えちゃ……」

 「莉亜この子は、レアナン・ナン・ジーハンだね!なんで隠してたんだい!リッキーお前もだよ!」

 「だってよ~シーラ……」

 「隣人達からしたら、特別なんだ。仕方ないだろう?シーラこのことは出来る限り人に知られないほうがいいんだ。」

 「まったく莉亜……あんたって人は……くらげ裏から箒とトンカチ持っておいで。くらげ……君は悪くない!この何も教えて来なかった莉亜が悪いから……」

「あんた……あの子の運命は伝えてあるのかい?」

「短命だという事かい?もちろんさ。隠したってしょうがないさ。この子は奇跡の子なんだよ。シーラも知ってるだろう。我々の様な種族のことを。この子は不老不死の種族と寿命がある種族の異種混合で生まれた奇跡の子だからさ。そう簡単に死ぬ事はないだろうさ……怖いのは俗にいう闇落ちかね?」

「そうなのか……数奇な運命を背負った子だね。莉亜……私も力になるさ。相談相手くらいにはなれるだろう?」

「そのつもりで連れてきたのさ。とても愛くるしい子だから……仲間を増やしてあげたいんだ。頼むよ……シーラ」

「わかったよ。ほら!くらげ……トンカチで割って箒で集めてくれるかい?」

「はい!シーラさん!その……ごめんなさい……工房をこんなにしてしまって。」

 自分の力の恐ろしさに怖くなってしまって涙があふれてしまった。見つからないように涙を服で拭いながらトンカチで割ってるとシーラに頭を撫でられた。

「くらげ……そんなに泣くことないよ。誰だって最初は失敗するもんなのさ。いいかい?この力はとても強いけど使い方を間違えなければ大丈夫さ。ほら見てごらん?こんな綺麗なブルースターを咲かせることが出来たんだ。素敵だろ?」

 そう言ってクリスタルの花をくれた。シーラのガーベラは触れたら消えてしまったのに私のは、まるで氷の様に固い。トンカチで割らないといけないほどだった。そっとポケットにしまったのを確認するとシーラは言葉を続けた。

「いいかい。強い力は凶器にも恵にもなるんだ。たくさんの経験を積むこと……そして決して一人で悩まない事。くらげ!この世界は楽しい事がたくさんある。ちゃんと見ておかないと見過ごすからね!」

 私の肩を軽くポンと叩くと、工房の奥に消えて行った。片付けをしていると、隣人たちが美味しそうに砕いた花を食べていた。言葉が話せるものは、許可を取りにくるものもいた。とても不思議な世界に迷い込んだ感覚に襲われた。そして片付けが一段落済むと工房の奥からシーラとリッキーが何かをしていた。

「いいかい?リッキー!これは、くらげの守りとなるローブだ。力を貸してくれるね!」

「しかたないなぁ~ロビンの為なら…やるか!シーラ何時ものよこせよ~」

「ったく。仕方ないね~ほらこれでいいかい‽」

 そういうと、シーラは小さな小瓶から真珠を取り出し3つほど渡していた。真珠を受け取ると首からかけている小さなポーチに大切にしまってから、リッキーは空中をくるっと1回転した。

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くらげの世界 夢咲心愛 @cocoa0713

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