修学旅行の怪
中学二年生の12月、私は修学旅行へと旅立った。
目的地は沖縄県である。沖縄といえば大東亜戦争終盤で戦地となった場所だ。
戦闘は激しく、この世の地獄を詰め込んだような悲惨な惨状だったという。
多くの現地住民が戦闘に巻き込まれ、現地住民だけで推定9万4千人が亡くなり、日本軍の戦死者も含めると約20万人がこの地で命を散らしたとされている。
そのような地に赴くにあたり事前勉強はしていたが、それでもまだ14歳。
行ったことのない地に向かうワクワク感、修学旅行以外では作れない青春の思い出作りができるということで、私含めて皆浮かれていた。
まず初日は半日をかけて沖縄へ移動して、美ら海水族館や首里城を訪れ、国際通りでお土産を買ったりして楽しんだ。
2日目は午前中レジャーを楽しんだ。しかしこれは修学旅行。いつまでも楽しんでいては勉強にならない。
ひめゆりの塔、平和記念公園へ赴き、この地でどのような悲劇があったのかを知り、身も心も引き締まる思いになった。
その日の夜、ホテルで戦争経験者からの話を聞いた。当時を知るお婆さんの言葉は資料や写真を見るだけでは感じられない言霊による強い思いを感じた。
不可思議なことが起きたのはそんな日の夜だった。
ホテルの部屋は2人部屋で、私は友人と翌日に備えて眠りについた。
朝が早かったので友人の腕時計でアラームをセットして、ベット脇にある小物がおけるスペースに置いて眠りについた。
疲れていたこともありぐっすりと眠り、翌日、目を覚ました。
友人もほぼ同時に目を覚ましており、体を起こした。
そこで違和感を感じる。
ベッドから体を起こすと、目の前にはテーブルと椅子があり、壁には鏡がついている。
そのテーブルには私と友人のリュックが置いてあるだけの筈だった。
そこに何故か友人の腕時計が置かれている。
友人に、腕時計を動かしたか聞いた。
友人は顔を傾げて、テーブルの上の腕時計を確かめた。
友人は少し強張った顔で、「動かしていないし、セットした筈のアラームがきれている」と私に腕時計を見せる。
確かに腕時計のアラームがきれている。時刻はアラームをセットした時間より前だ。
誰かが操作しない限りアラームは鳴る筈なのだ。
その不可解な状況に恐怖を覚えて、私と友人は気のせいという事にして紛らわした。
その後はガマに入ったり、戦争の跡地を回ったが何事もなく、無事に帰宅することが出来た。
沖縄という地で起きた少し不可解な話であった。
学校の怪 ひぐらしゆうき @higurashiyuki
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