倉庫内の扉

私の通っていた小学校は少し変であったのは確かだ。

 音楽室に給食の搬入室があったり、理科室の中に放送室があった。

 もう少しどうにかならなかったのかとは常々思っていたが、今になって思い返せば仕方がない所があったのだろう。

 私の通う小学校は丘の上にあり、正門まではトラック一台通るのがやっとな狭い道を通らなければならない。

 正門すぐ左が先生方の駐車場で右に音楽室。校庭には車が入らない。なので、給食は音楽室から搬入するしかないのだ。

 理科室内の放送室も隣が職員室なので理にはかなっている。

 考えれば理解できるならば良いのだけれど、どうしても不可解だったのは家庭科室奥の物置にある扉だった。

 そもそも、その物置の中を見る事は滅多に無かった。中を見る時といえばイベント時に荷物を取り出して先生が開け放っている時くらいだ。

 特に鍵がかかっているわけではないが不思議と開ける気にならなかった。

 そんな倉庫の中には謎の扉があった。外から見る限り、倉庫と外を繋ぐ扉などない。

 つまり、扉の先には部屋があるということになる。

 気になっていた私は確かめたいという気持ちが湧いてきた。

 しかし、倉庫に侵入するにしても少し面倒な問題があった。

 家庭科室前の廊下は中庭を挟んで向かい側にある職員室からみえる。倉庫前まではしゃがんで進めば見える事はない。

 しかし、倉庫の扉を開ける時は扉の取手に手を伸ばさなければならない。その時は身体が隠せないのだ。

 少し考え、私は事前に指が入るくらい扉を開けておくことで、立ち上がることなく扉を開けられるようにしておいた。

 そうして私は放課後、倉庫前にランドセルを置いて侵入した。

 倉庫内は暗く、日の光は殆ど入ってこない。電灯のスイッチは見つからなかった。

 倉庫の中は埃っぽく、様々な物が無造作に置かれていた。

 木材や昔のポスター、掃除道具、工具などがある。

 ただいるだけでも気味が悪い。とにかく気になる扉の先をさっさと見て帰ろうと思い、私は倉庫奥の扉へ手をかけた。

 扉のノブを回して引くとキィと音を立てて開いた。

 扉の先には部屋があり、色々と物が置かれている。物置の延長であり何も不思議な事はなかった。

 特別何も無かったので、私は部屋の中を探索することもなく外へ出ようと踵を返す。

 その時だ。部屋の中からカタリと音が聞こえ、驚いてすぐに振り向いた。何か落ちたのかもしれないが、暗くてよく見えない。

 私は途端に怖くなり、寒さを感じた。

 扉を閉めて、すぐに倉庫の出口へ向かった。倉庫から出て扉を閉める為に振り返った時、閉めたはずの奥の扉が少し開いている。

 そしてその奥から、何者かの視線を感じた。

 私はすぐさま扉を閉め、ランドセルを背負うと家へと走り帰った。


 後日、明るい時間帯に家庭科室奥の倉庫が開いていた。

 中の扉はやはり少し開いていた。あそこには何かいたのだろうか。

 少なくとも、私は何者かの気味の悪い気配を感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る